【特集】中国経済はどこへ向かうのか 後編(慶応大・大西広)

   

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習近平政権は「いい線行ってる」

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習近平政権が打ち出す産業政策は、決して無鉄砲なものばかりではない。むしろ「いい線行ってる」というのが私の率直な印象だ。

政治的な独裁体制を捉えて「共産党独裁はけしからん」と批判する者が多いが、その経済政策を冷静に評価する視点はあるだろうか。

例えば、まったく見当違いな政策ばかり決めていたら批判も尤もだ。

しかし、前述の「EV」をめぐる長期戦略を見ても、日本に住む私からすれば、往々にして国益に合致しない政策が選ばれる「資本家独裁」よりは良いだろうと思う。

同じ「国家独占資本主義」の日中経済を並べると、現状では中国の方が「うまく機能している」と言えはしないか。

 

習近平「独裁」の結果、経済が大きく発展し、国民生活がより向上するならば、我々は中国の全てを否定することはできない。

日本が学ぶべきことがあるかも知れない。

党主導の経済、そこで適切な産業政策が選ばれているという現実を、我々は直視すべきではないだろうか。

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中国経済はどうなっていくのか

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筆者は「中成長を模索する中国」(2016年、慶應義塾大学出版会、編著)で、経済面においては日中間で約40年のギャップを持っていること、そして中国経済は2033年前後にゼロ成長(1%未満の成長率)を迎える、という見方を示した。

今年、当研究室で改めて試算したところ、2050年にゼロ成長を迎えるという結果となった。

つまり、中国の経済成長率は年0.2~0.3%の比率で低下する、それが妥当なラインであるということだ。

 

成長率が低下するということは、投資主導の成長から消費主導の成長へと変わらなければならない。

これは例えば、政府による財政出動、公共投資が抑制的になっていくという意味合いを持つ。

したがって長期的な展望では、経済における政府の役割は縮小し、民間資本の占める割合が増えることになる。

 

中国経済の中長期的な見通しについて、2014年、習近平は「新常態」という言葉を使った。

言い換えれば「中国の高度成長の時代は終わり、成長率が徐々に低下していく」ということだ。

彼はこれを自ら示し、また国民にその腹積もりをさせた。

習近平政権は、成長の減速を予測した上で、その巨大な経済をコントロールしながら軟着陸させようと考えている。

日本では1992年からゼロ成長時代に入って今に至るが、時の政府はそれを予想できただろうか。

これもまた、独裁と言われる党主導経済の功名か。

大西 広(おおにし ひろし)

慶應義塾大学経済学部教授。京都大学名誉教授、世界政治経済学会副会長。専門はマルクス経済学、中国経済論。共産主義国の経済体制、中国における少数民族問題にも詳しい。著書に『中国の少数民族問題と経済格差』(編著、京都大学学術出版会、2012年)、『成長国家から成熟社会へ』(共著、花伝社、2014年)、『マルクス経済学(第2版)』(慶應義塾大学出版会、2015年)、『長期法則とマルクス主義-右翼、左翼、マルクス主義』(花伝社、2018年)など多数。京都府出身。

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https://www.levada.ru/2016/04/07/mezhdunarodnye-otnosheniya-2/

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