【特集】中国経済はどこへ向かうのか 前編(慶応大・大西広)

      2019/01/25

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海外の中国人技術者を戻すだけで十分?技術覇権をめぐる競争の実態

https://pixabay.com

 

今回の米中摩擦は単なる貿易の量の問題ではなくて、根本的には技術覇権をめぐる戦いであることに異論はない。

例えば、中国が弱い分野の1つに半導体があり、米中摩擦の焦点の1つとなっている。

世界シェアで見ると、スマートフォンでは世界トップ12のうちの9つ、リチウム電池ではトップ10のうち7つが中国企業だ。

しかし、半導体ではトップ10のうち中国企業は1つもない。

これを受け、習近平は「中国製造2025」の柱の1つに半導体の国産化を掲げ、技術獲得・向上に躍起になる一方、今年10月29日、アメリカが半導体製造装置の対中輸出規制を行った。

中国が自らの弱点を強化する動きがあり、それをめぐる応酬、という構図だ。

 

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半導体をはじめ、先端技術の獲得に血道を上げる中国だが、その取組の1つが「引才政策」と呼ばれる人材誘致だ。

一例を紹介しよう。

今年夏、中国のある地方都市で「引才」に関するイベントが開かれた。

日本では名前さえ知られていない江蘇省の一都市に、世界各地から研究者が集う。

彼らは、自身の発明や研究内容をプレゼンし、関心を持った企業家が次々に声を掛けていく。

主催者側から提示された条件は次のようなものだ。

「世界一流・国内トップ」であれば年俸1000~2000万元(約1億6000万円~3億2000万円)、「国内一流・産業リーダー」では100~350万元(約1600万円~5600万円)など。

このほか研究施設や秘書が提供され、さらにはブランド車も貰えると言うから驚きだ。

今、このようなイベントが中国全土で、しかも日本では到底真似できない規模で行われている。

 

興味深かったのは、集められた研究者のほとんどが、海外で先端技術の研究を行う中国人だったことだ。

今回訪れた都市は日本から直行便のない地方都市であり、外国人の多い上海や深圳とは違う。

いくら高額の報酬が提示されても、例えばここにアメリカ人を呼ぶのは難しいだろう。

しかし、イベントを視察して痛感したのは、海外にいる中国人研究者を戻すだけである程度賄える、という実態だ。

「中国人だけで何とかなる」

これが世界の技術覇権をめぐる競争の横顔であり、より本質的には、14億もの民を抱える中国のパワーでもあるのだ。

 

大西 広(おおにし ひろし)

慶應義塾大学経済学部教授。京都大学名誉教授、世界政治経済学会副会長。専門はマルクス経済学、中国経済論。共産主義国の経済体制、中国における少数民族問題にも詳しい。著書に『中国の少数民族問題と経済格差』(編著、京都大学学術出版会、2012年)、『成長国家から成熟社会へ』(共著、花伝社、2014年)、『マルクス経済学(第2版)』(慶應義塾大学出版会、2015年)、『長期法則とマルクス主義-右翼、左翼、マルクス主義』(花伝社、2018年)など多数。京都府出身。

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https://www.levada.ru/2016/04/07/mezhdunarodnye-otnosheniya-2/

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