高級ホテルを狙うテロと邦人の危機管理

      2018/04/30

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被害のあったインターコンチネンタルホテル・カブール(出典:Hotel Intercontinental Kabul Facebookより)

被害のあったインターコンチネンタルホテル・カブール(出典:Hotel Intercontinental Kabul Facebookより)

今月20日(現地時間夜9時ごろ)、アフガニスタンの首都カブールにあるインターコンチネンタルホテルを狙った襲撃テロ事件が発生し、これまでに外国人14人(ウクライナ人9人、ドイツ人、ギリシャ人、カザフスタン人など)を含む18人が犠牲となった。襲撃した実行犯は6人組で、同ホテルに立ち入るや否や銃を無差別に乱射するなどして立て籠ったが、その後ホテルに駆けつけた治安部隊によって制圧された。事件後、反政府勢力のタリバンが、「軍事的な駐留を続ける欧米やその『手先(傀儡)』たちを狙ったテロ事件だ」とする犯行声明を出した。

日本人にとっても決して対岸の火事ではない

この事件を聞いて、大方の日本人は対岸の火事だと思うかもしれない。もしくは事件のことを考えることもしないだろう。しかし、グローバル化の急速な進展のもと中小企業の海外進出が加速化し、その一方で食糧やエネルギー資源、また近年では人的資源も外国の若者の労働力に頼らないと経済が回らない日本にとって、それは決して他人事ではない。

なぜなら、同事件は他の多くの国で発生するイスラム過激派によるテロ事件と、明白な類似点があるからだ。

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「外国人はどこだ?」と尋ねる実行グループ

アルジャジーラ系列のネットメディアが報じる襲撃後のホテルの様子

この襲撃テロ事件でのポイントは、まさに外国人が標的だったということだ。ホテル内部にいたある目撃者によると、実行犯らは、「アフガニスタン人は撃たない。外国人はどこにいる?」などと尋ねていたとされ、始めから外国人を狙う計画だったことが窺える。そしてそうであるなら、現地にあるインターコンチネンタルなどの欧米系一流ホテルは、欧米諸国を中心とする多くの外国人(外交関係者や国連関係者含む)が宿泊しているという蓋然性が高いことから、明らかにテロの標的となりやすい。これは、2013年1月にアルジェリア人質事件、2016年7月のダッカ・レストラン襲撃テロなど、多くの邦人が犠牲になったテロ事件と似たような状況で、これら事件の実行犯らは、イスラム教徒かどうか、もしくはコーランが読めるかどうかで人質を区別していたとされる。

繰り返される欧米系一流ホテルへのテロ事件

そして、今回のような事件は他の国々でも断続的に発生している。9.11同時多発テロ以降でも、例えば以下のような事件がある。

海外 高級ホテル テロ

高級ホテルを狙った近年の主だったテロ事件(クリックで拡大)

もちろん上記だけではなく、ソマリアなどでは高級ホテルを狙ったテロが繰り返し発生している。高級ホテルである分、それだけ警備が厳重であると思われるが、決して命の保障があるわけではない。筆者も一昨年、インド・ジャイプールでの国際会議の際、高級ホテル(ITC Rajputana)に4日間滞在したが、周囲を囲むコンクリート壁はテロリストの侵入を考えると決して十分な高さとは言えず、また自爆テロを試みる車の侵入を抑えられると堅牢さも感じなかった。

海外に滞在する日本人や進出する日系企業の数は増加傾向にある。その際、途上国への出張者の多くが滞在するのがこのようなホテルだろう。警備が厳重に施されている一方、欧米人などの外国人が多く宿泊するという理由で、却ってイスラム過激派の標的になりやすいという現実もある。出来ることにはもちろん限界があるが、その国の政治・治安状況だけでなく、軍・警察の腐敗度、またホテルの立地や周囲環境、経営母体などにも配慮する必要があると思われる。セキュリティに掛かる費用は、日本ではコストと認識されがちであるが、その中に少しでもプロフィットという認識が広まることを願って止まない。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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