【アルジェリア人質事件から5年】国際テロからどう邦人の命を守るか?

      2018/04/30

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日揮本社があるビルの1階エントランスには、事件後 犠牲者を弔う数多くの花束が置かれた。(Photo by Toshinori baba)

今月16日で、日本人10人が犠牲となったアルジェリア・イナメナス人質テロ事件(以下、アルジェリア人質事件)からちょうど5年となった。この事件は、より複雑化する世界的なテロ情勢の中で、如何に海外邦人の安全を守るのかを我々に考えさせる大きなきっかけとなった。

アルジェリア人質事件から5年、この間に我々はシリア・イラクで一定の領域を支配する「イスラム国(IS)」という前代未聞の脅威に直面し、多くの日本人がそれによる(その影響を受ける関連組織と個人による)犠牲となった。2015年1月のシリア邦人男性殺害事件(邦人2人死亡)、2015年3月のチュニジア・バルドー博物館襲撃事件(邦人3人死亡)、2016年7月のダッカ・レストラン襲撃事件(邦人7人死亡)など、断続的に海外邦人が犠牲になる事件が続いている。

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ある地域における急速なテロ情勢の悪化に注意

邦人が巻き込まれた事件には前兆があった

アルジェリア人質事件が起きる2012年は、アフリカ北部でも数多くのテロ事件が発生していた。

では、我々がこの上記4つの事件から教訓を得るとすれば、それは何であろうか。これらテロ事件を機に、テロ情報の収集・分析、駐在員・出張者の安否確認など官民を超えた危機管理対策が強化された。一方、国際テロリズム研究の立場からは、「テロ事件の前(半年〜2年あたり)に、その地域一帯のテロ情勢が急速に悪化していた」ことが共通項として挙げられる。

筆者は9.11同時多発テロ以降のグローバル・ジハード運動を中心とする国際テロ情勢を注視してきたが、例えばアルジェリア人質事件の直前には、アフリカ地域のテロ情勢に国際社会の焦点が集まっていたことを強く覚えている。また、2015年1月の事件前の2014年には、ISの支配領域が急速にイラクへ拡大し、2015年3月の事件前にはISのリビア支部の動きが強く指摘されるようになった。さらに、バングラデシュのテロ情勢も2015年以降顕著な悪化が見られるようになり、これら邦人が犠牲になった事件からは、その地域のテロ情勢の急激な悪化というものが前兆としてみられた。

情勢悪化のシグナルを見逃すな

21世紀以降のテロ情勢では、アルカイダやISへ忠誠を表明する地域支部といったものが拡散的に現れている。当然のことながら、各組織によって地域性や規模は異なるが、各組織は忠誠・支持を表明するからには自らの存在を強くアピールしなければならない。よって、組織の規模を拡大し、また他地域で活動する同系統の組織からの支持・注目を集めるためにも、地域支部といったものは大規模なテロ、もしくは連続的な小規模テロをできるだけ早期に実行する傾向があると筆者は考えている。

これは近年のミンダナオ島・マラウィ情勢にも当てはまることで、特定地域における急速なテロ情勢の悪化という前兆は、何かしら大きな事態が発生するシグナルと捉えても間違いではないかも知れない。

過去の教訓から、特定地域のテロ情勢の急速な悪化というものは、メディアでは大々的に取り上げられない。取り上げられるのはほぼ事件の後だ。海外邦人のさらなる犠牲を回避するためにも、流動的に変化するテロ情勢を常時注視し、何か怪しい動きが見られる場合には、早期に危機管理対策を講じることが何よりも重要だ。それが過去の事件から我々が最も学ばなければならないことだろう。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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