北京・上海から地方大都市へ 移動する中国の大卒人材

   

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今、中国の都市は変わりつつある。大卒人材が、北京・上海といった都市からその他の地方都市に移動している。

ある調査によれば、2017年の大学卒業生(中国の大学は6~7月が卒業時期)が卒業後に杭州、成都、武漢、南京、青島などの「新一線都市 (右、政治経済において地域的に重要とされる二線都市から近年発展が目覚ましいゆえに新たに一線都市として格上げされつつある大都市) 」に定住する比率が、北京、上海、広州、深センの一線都市(中国で政治経済などにおいて全国的に重要とされる大都市)へ定住する比率と拮抗してきたことが分かった。

特に新一線都市に定住する割合が37.5%と後者の合計の29.9%を超えてきていることからも、大卒人材の大都市離れが今後進んでいくのではないかと考えられる。特に、筆者が以前紹介した杭州は、実際の人材流入率は全体の11.78%とどの大都市とも劣らない割合を占めている。

「北京・上海には住みたくない」学生たちの本音

上海最大の繁華街『南京路』(Wikipedia Photo by P.B.~commonswiki)

上海最大の繁華街『南京路』(Wikipedia Photo by P.B.~commonswiki)

学生自身にも、大都市ではなく地方の都市へ行きたい理由がある。筆者の身近な例を取り上げると、北京や上海、杭州の大学に所属する友人たちの多くが、卒業後に北京や上海などに住むのを嫌っていた。ひとえには、彼らは元々そのような大都市の出身ではないため、一人で卒業後そのような都市に住むとなると生活費が心配であるという。また、別の意見では大気汚染を含む環境汚染や大量の人混みなどを嫌い、比較的環境もよく、人も少ない地方都市で仕事をしたいという人も多くいた。

こういった学生たちの状況と、さらに近年の企業が一線都市から政策環境や地理的条件のよい他の都市へ経営拠点の移転を行ってきたことが追い風となって、中国各地の地方政府は様々な「優待」を使って大卒人材の獲得競争を展開している。

北京の人混み(出典:https://twitter.com/tebie_/status/887956965883817984)

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大卒人材を競って呼び込む地方大都市

武漢市が進める「百万大学生留漢起業・就職プロジェクト」(出典:http://xsc.wfu.edu.cn/s/16/t/913/d4/d6/info120022.htm)

若者たちの地方大都市への移住を促しているのはただ単に彼ら・彼女らの需要によってのみではない。政策面での後押しもある。

習近平政権になって以降、日本のメディアでは、住宅価格調整政策や河北雄安新区に代表される北京・天津・河北省一体化政策がよく報道されている。

これらの政策は、人口過剰などによるいわゆる「大都市病」の解決と中国の更なる経済発展のために、これまで中央政府が主導してきたが、ここ1年の間で中国の官製メディアや地方政府の発表で注目されているのが、地方政府による大卒人材の「優待採用」政策である。

例えば、2017年7月7日官製メディアの央広網は、武漢・長沙・成都・西安などの二線都市が大卒人材を競ってそれぞれの都市に移住させる政策を展開していると報道した。
全国各地の地方政府は、大卒人材が自らの都市に定住し、就職することなどを条件に戸籍、住宅補助、車購入手当を賦与することを政策として発表している。

特に、戸籍は中国では自分の親の戸籍がそのまま子に受け継がれ変更するには厳しい条件をクリアせねばならない。さらに農村戸籍と都市戸籍の区別や都市ごとで完全に分けられている。つまり、自らの戸籍がない省や都市では、中国の人たちは本籍地では受けられる同等の医療や教育、各種社会保障サービスが受けられない。
また、現在中国の都市における住宅などを含む生活費は、新卒の学生一人分の給料で住めるほど安くはないため、このような補助は魅力的に思える。

上記以外にも、地方採用を促す政策の例としては、杭州市の「高等教育卒業生の生活補助金給付政策」がある。この政策では、卒業後一年以内の期限付きで単位(日本の独立行政法人に相当)就業や起業した人、あるいは修士の学生には年間2万元が、博士の学生には年間3万元が給付される。

地方大都市の持続的発展はあるか?

もちろん、こういった政策による大卒人材の分散化を長期的に継続させていくには、若者が移住をしたくなるように都市の持続的経済発展が必要である。また、地方都市において若者が住みやすくなるように、より良い住環境や社会インフラを制度的に完備していかなければならない。

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橋本 誠浩
橋本 誠浩(はしもと ともひろ) 東北大学法学部法学科卒業(法学学士)、浙江大学公共管理学院AFLSP2015(公共管理修士)修了。専門は、中国政治。特に現代都市社会について政治学の観点から分析を行っている。中国で3年過ごし、現在仙台を拠点に研究活動を継続。

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