習近平、アリババ……十九大党大会で再び注目あびる中国・浙江省

   

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現国家指導者たちのゆかりの地

習近平

(出典:首相官邸HP)

昨年の9月、浙江省杭州市において中国初のG20首脳会議が行われた。北京や上海でなく、浙江省杭州市で行われた理由の一つに、習近平国家主席は、以前に浙江省のトップを歴任してきたという背景がある。つまり、習近平党主席にとって、浙江省とはこれまでの政治キャリアの重要なバックグラウンドとなる地域なのである。

それが如実に表れたのが、先月行われた中国共産党党大会、「十九大」である。
実際に習国家主席は中国共産党のトップリーダーたちの人選において自らに近い人物を登用する動きが目立ってきた。先月の党大会では、今後5年の新しい人事が発表されたのであるが、そのトップ25の党政治局委員の中には、上海党書記(中国では党書記が市長よりもトップとされる)の李強、北京市党書記の蔡奇、重慶市党書記の陳敏爾、習近平政権のイデオロギー思想の拡散を担当とする中央宣伝部長の黄坤明ら、習近平総書記が浙江省にいた2002年から2007年の間に側近であった人物たちが抜擢された。彼らは、現在「浙江閥」と呼ばれ、江沢民派である「上海閥」や、胡錦涛派の「共青団派閥」とは対抗する派閥として現在とらえられるようになってきた。

陳敏爾

「浙江閥」の中でも時期習近平総書記の後継者とみられる陳敏爾(出典:http://www.rh.gov.cn)

経済方面でも政府が重要視する浙江省

アリババCEO ジャック・マー

アリババCEO ジャック・マー

浙江省では新しい経済主体が中国の政治に強い影響を与えている。それはジャック・マー氏が創業したアリババグループである。先日の11月11日にも「独身の日」で2.87兆円ものセール売り上げを達成したアリババは浙江省で創業され、本社も現在浙江省の杭州市にある。

今後の中国経済の成長基盤としてIT産業を牽引することでも重要なこの巨大企業は、政府から重要視されている。さらに現在中国政府が全国的な導入準備をしている市民の「信用ポイント」制という、中国の新しい社会統治システムにアリババは重要な役割を果たしていく。

習政権の「新時代の社会主義」のキーファクターとなるIT技術×国家形成

アリババが運営する「芝麻信用」ポイント制度のポイント確認画面

この「信用ポイント」制とは、簡単に言えば、SNSでの言動、公共料金の支払いや納税、社会ステータス、借金の有無などに応じてポイントが賦与され、ポイントが高いか低いかに応じて、出国や投資、銀行口座開設、昇進などにおいて特定の個人のみならず、その家族までもが制限を受ける可能性が出てくる制度である。
中国では、個人情報の扱い方や考え方が政府・個人を問わず日本と異なり「ルーズ」なのであるが、中国政府はこの「ポイント」制を運営するために、アリババやそのほかの個人情報を取得する企業などを通じて上記ポイントに関わる個人データを取得していく意向である。実はアリババでは、現在アリペイ(支付宝)を使って、独自の「ポイント制度」をすでに導入しているが、何億人ものユーザーを持ち、生活上のほとんどにおいて決済を可能にしているアリペイ(支付宝)及びそれを運営するアリババは、今後政府の制度運営にとって非常に重要な存在となる。(2017年7月20日新華社「信用:一张城市治理的“新名片”」)

このように、IT技術が中国の社会生活に浸透すればするほど、習近平総書記の言う「新時代の社会主義」国家中国をつくっていく上でアリババなどの企業が政府によってより重要なファクターとなる。そして、アリババの拠点であり、そのIT技術が今最も浸透している浙江省は、今後重要な拠点となっていることが間違いない。

ここまでの内容を読んではじめて、浙江という地域を強く意識した人もいるかもしれないが、浙江省は清末以来、「中国」という国家形成において非常に重要な地域である。

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中華民国と浙江財閥

例えば浙江財閥である。浙江財閥とは、中華民国期に上海を中心に企業活動で財を成した浙江省・江蘇省出身の資産家たちの総称である。この浙江財閥は、当時群雄割拠の中国国内において国民党政権と密接なかかわりを持ち、財政的支援をしていた。神戸又新日報 1930.5.2 (昭和5)には、「蒋介石を脅かす浙江財閥とは」という記事があるように、その存在は当時の国の指導者たちにも大きな影響を与えていたことがうかがえる。

知識人魯迅の故郷

魯迅

魯迅の肖像写真(1930年)

近現代の中国とは、上記のような財閥や軍人のみならず、知識人によっても造られてきたのであるが、その代表が浙江省紹興市出身の魯迅である。日本でも『阿Q正伝』『故郷』などで知られる魯迅は、中国国内においてもその近代中国を造ってきた思想や文学作品が中学や高校で今でも教えられている。
魯迅は列強によって浸食される祖国を救わなければならないという清末以降の中国知識人が直面した問題を前に、文学を通じて、中国の人々の精神を近代的なものに変革することを志した。ここでいう精神の変革とは、「中国人」という一つの国民を想像することであるが、当時の中国の社会では、そこに住む人すべてが、自らが「中国人」であるという自覚はなかった。また、中国という近代国家の形成すらまだ道半ばだった。魯迅の文学は、中華人民共和国建国後においても一体的な「中国」という近代国家形成と、その国を愛し・憂うことを共にすることのできる「中国人」の形成に大きく利用をされてきた。

このように近代国家「中国」の形成において重要である浙江省が、今再び習近平政権下において「新時代」の国造りの根拠地として再び注目がなされている。

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橋本 誠浩
橋本 誠浩(はしもと ともひろ) 東北大学法学部法学科卒業(法学学士)、浙江大学公共管理学院AFLSP2015(公共管理修士)修了。専門は、中国政治。特に現代都市社会について政治学の観点から分析を行っている。中国で3年過ごし、現在仙台を拠点に研究活動を継続。

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