杭州市(浙江省)と日本-相互交流の歴史と現在

   

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杭州市と日本

大学120周年記念の時のライトアップの様子

前回の記事では、杭州の紹介として西湖の風光明媚な景色や食を取り上げた。今回の記事では、杭州という都市を読者の皆さんにとってもっと身近に感じてもらうために、杭州で日本を感じた瞬間を紹介したい。

前回の記事

北京や上海だけではない!中国の政治経済文化の発信地・杭州

浙江大学と早稲田大学の桜

杭州市と日本

浙江大学キャンパスにある桜の木

杭州(浙江省)には、浙江大学がある。中国国内の大学ランキングでトップ5に入る有力な大学の一つである。また、現在国際的に注目がより集まってきている大学の一つであり、日本の学者や研究機関なども交流活動をどんどん行ってきている。研究施設の規模でいえば北京大学や清華大学などに次ぐ規模を誇る。また、北京や上海、広州にある大学とはまた別の言論空間を形成する重要な地位を占めていると言ってよい。

そんな中国にかかわる日本人にとって今後ますます注目すべき浙江大学であるが、研究以外にも日本との交流がある。

浙江大学の開校110周年の際、早稲田大学からの留学生や卒業生を中心として110本の桜の木が校内に贈られた。今年の春も、広大な敷地のキャンパス内できれいな風景を演出している。キャンパス内にある多くの桜の木の下では、毎年親睦を深めるために日本人と中国人の学生、OB・OGが主催する花見が開かれ交流の歴史が積み重ねられている。

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福井と杭州の関係

杭州市と日本

友好公園の石碑

また、前回紹介した世界遺産の西湖も日本との意外なつながりがある。

西湖のほとりを筆者が散歩していると「福井杭州 友好公園」という石碑をみつけた。福井市と杭州市は姉妹都市であり、この友好公園は両都市の友好の証として1994年に造られた。

実は、この公園ができるまでの交流の歴史は長く、1972年の日中国交回復前後から公式に始まる。1972年以前から日本全国各地で日中の国交回復の要請が民間社会から起こっていた。ニクソン元米大統領に続き、田中角栄元首相が訪中したことを契機に、北信越5県で友好訪中団が結成された。その時に県職員として参加したのが、後に上の写真の友好公園建設に携わる酒井元市長であり、同氏も関わる福井と杭州の交流がその後発展していくことになる。

注目すべきは1989年に両市が友好都市提携を結んだことだ。1989年といえば6月4日に天安門事件が起き、中国が国際社会で批判的な目を向けられていた年である。当時、福井と杭州の友好都市提携を結ぼうとした直後に事件がおこり、各方面から提携中止の声が上がった。しかし、大武元市長は、中国との関係を長い目で見て提携に踏み切る政治的決断をした。

そのような両国の関係の危機を乗り越えたストーリーがあったからこそ、その後も両都市の友好関係は続き、杭州市民の憩いの場にもなっている友好公園が造られることになった。また、酒井元市長と大武元市長は、両国及び福井と杭州の友好に尽力したとして杭州市から栄誉市民として今も称えられている。

杭州市と日本

福井市と杭州市が友好公園内に友好の証に建てた友愛の像。この像の前には、大武元市長の遺骨も埋められている

友好関係と反日・反中感情の交錯

このように中央政府の外で日中地域交流が盛んに行われ、それが次の世代へと受け継がれていった。こうした草の根交流を通じて、中国ローカルな社会と日本のローカルな社会の相互理解に少なからぬ影響を与えている。

他にも、中国を歩くと所々で日本との交流の証を発見することがある。大きなものでいえば、北京の地下鉄などは、戦後日本の賠償という意味合いも持つ日本の対中援助の成果としてできたものなので、駅員の服装や駅の内装などに所々日本のそれらと重なることがある。そのような大都市の目立つ物のほかにも、地方都市を歩いていると日本の地方行政組織やあるいは個人が中国の地域社会発展の協力してきたところも見られる。

杭州市と日本

住宅街の掲示されていた第二次世界大戦で日本と中国の戦いを描いた絵

もちろん、街を歩いていると日本の第二次世界大戦までの中国一部地域の侵略に関する歴史を啓発する掲示があったり、そういった話もよく聞く。しかし、このような歴史の問題に対する相互理解も含めて両国の間で行政レベル、民間レベルとも時間をかけて地道な努力をして相互関係発展を積み重ねてきて今も根強く続いている。だからこそ、実際中国の街中を歩いていると反日といった負の感情を抱く人々だけではなく、交流を通じて同じ何かを共有してきた人々もいる。

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橋本 誠浩
橋本 誠浩(はしもと ともひろ) 東北大学法学部法学科卒業(法学学士)、浙江大学公共管理学院AFLSP2015(公共管理修士)修了。専門は、中国政治。特に現代都市社会について政治学の観点から分析を行っている。中国で3年過ごし、現在仙台を拠点に研究活動を継続。

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