激動の2017年・東南アジアのテロ情勢 (6)ミャンマー

   

スポンサーリンク

ミャンマー

世界中のテロ情勢をウォッチングする中で、ミャンマーの情勢について触れることは決して多くはなかった。

しかしシンガポールと同じようにISの拡散とでもいえる今日の現象は、ミャンマーのロヒンギャ問題を媒介として、

地域レベルの問題を部分的にもグローバルな視点で観る必要性を我々に提示している。まさに“グローカル”な問題が今日のミャンマーには存在する。

「ビルマの火薬庫」ロヒンギャ問題 テロ組織のミャンマー介入を続々誘発

イスラム国

イスラム国の機関誌「Dabiq」より。同組織は「ビルマ(ミャンマー)のイスラム教徒が仏教徒の抑圧に苦しんでいる」と紹介している。(NGO「クラリオン・プロジェクト」HPより)

2015年、ISはミャンマー当局を攻撃する意志をネット上で示し、また2016年4月に発表した機関誌ダービック(Dabiq)14号の中で、

抑圧されるロヒンギャを救うため協力を求めるISのバングラデシュ人戦闘員の姿を公開したが、その標的にはアウン・サン・スーチー氏の名前が含まれていた。

そしてこれらに関連する最近の事例として、例えば去年10月、ミャンマー南西部でバングラデシュと国境を接するラカイン州にある警察署を200人くらいの武装した集団が襲撃し、

警察官9人が死亡する事件が発生した。襲撃した200人はロヒンギャ連帯機構(RSO)に関連するムジャヒディン組織で、

当局の情報によるとこの集団は外国のテロ組織から資金面で支援を受けていたとされる。

RSOはパキスタンのカラチを拠点とし、そのメンバーは中東やインド、バングラデシュで活動し、2008年11月のムンバイ同時多発テロの実行組織ラシュカレタイバ(LeT)や

インディアンム・ジャヒディン、ジャマトル・ムジャヒディン・バングラデシュ(JMB)などのイスラム過激派組織と深い繋がりがある。

またインドネシア治安当局は11月、ジャカルタにあるミャンマー大使館を狙った爆弾テロを計画していた容疑でISの支持者を逮捕したが、容疑者の動機の背景にはこのロヒンギャ問題があったとみられる。

「ミャンマー政府への抵抗を」3か国語でテロを煽る新興組織も

さらに昨今その動向に注目が集まっている組織として、Harakah al-Yaqin(別名 Faith Movement)がある。この組織は去年10月に初めてインターネット上に姿を示し、

AK-47のライフルを持った人物がベンガル語、ラカイン語、アラビア語で話し、外国に住むロヒンギャや世界中のジハーディストに対してミャンマー政府へ抵抗するため協力するよう強く求めた。

そしてその動画はその後ISやアルカイダに関連するテレグラムなどにアップロードされた。

このように昨今のミャンマーを巡る情勢は流動的に変化している。今後もミャンマー政府によるロヒンギャへの弾圧が続くと、

バングラデシュのイスラム過激派組織などを通して外国から戦闘員が流入し、ミャンマー政府へのテロ攻撃に拍車が掛かることも否定できないだろう。

スポンサーリンク
和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

 - 社会ニュース , ,