結局イスラム国とは何なのか?(上)支配地域を失うISと世界に拡散するIS

      2016/10/19

スポンサーリンク

ISの支配地域は縮小している

中東の動乱を潜り抜けたISの10年間

図1:ISの支配地域の推移(http://press.ihs.com/press-release/aerospace-defense-security/islamic-state-caliphate-shrinks-further-12-percent-2016-ihs)

図1:ISの支配地域の推移(http://press.ihs.com/press-release/aerospace-defense-security/islamic-state-caliphate-shrinks-further-12-percent-2016-ihs)

さて近年のテロ情勢を観ていると、「イスラム国(IS)がテロを実行した」、「ISが犯行声明を出した」、「五輪を迎える日本でもISのテロは起こるのか」など

IS、ISという言葉をテレビや新聞で何回も聞き、その言葉を知らない日本人の方が少ないくらいだ。

知っている方もいるかもしれないが、ISとは2003年のイラク戦争から、アラブの春、そしてシリア内戦という中東の動乱を潜り抜ける中、

シリア内戦で空いた無法地帯(スペース)を巧みに利用し、そこで一種の充電を行い、

2014年に入るや否やイラクの西部や北部を中心に支配地域を拡大して上記の図のように至った武装グループである。

支配地域の縮小

2014年9月時には、イギリスのグレートブリテン島と同じくらいの面積をコントロール下に置いたが、

それ以降は米軍を中心とする有志連合による空爆、イラク軍やクルド武装勢力などの地上戦強化により支配地域を縮小させている。

例えば上記の図1によると、2015年にISが失った地域は赤茶色で示され、2016年に失った領域は赤色で表されているが、

どんどん外側から地上軍の攻勢に対して劣勢になり、2016年6月現在灰色で表現されている地域を支配するものの、

間もなく(2016年10月13日現在)イラク北部のモスル奪還作戦が開始される予定で、ISが首都と定めるラッカも時間の問題だとの見方があがっている。

スポンサーリンク

世界各地で拡散するテロ

物理的攻撃では根絶できない SNSで世界各地に共鳴する思想

図2:拡散化するIS(http://iswresearch.blogspot.jp/2015/09/isiss-global-strategy-september-2015.html )

図2:拡散化するIS(http://iswresearch.blogspot.jp/2015/09/isiss-global-strategy-september-2015.html )

では有志連合とイラク軍などによる空と陸からの攻勢で、ISは根絶できるのだろうか。

答えはノーである。確かに軍事的に物理的な手段でISを弱体化させることはできるだろうが、ISは一般的な国家と違って、

正当な領土や領海、領空、国民、実効的な政府という国際法上の国家の3要素を全く満たしておらず、

単に武装勢力が無法地帯を占拠し、そこで勝手に統治しただけに過ぎない。

しかしISはフェイスブックやツイッターなどを駆使して広告活動を行い、それにより影響を受けた多くの外国人戦闘員がISに流入しているように、

ISの考え方に共鳴する人たちは世界各地で台頭するようになっている。

「支配地域を失うISと世界に拡散するIS」との終わりの見えない戦い

例えば図2によると、エジプトの「ISのシナイ州」やナイジェリアの「ISの西アフリカ州」などのように、

ISに忠誠を誓い、ISの支部を名乗るような組織が南アジア地域からアフリカ地域の広い範囲に及んで拡散的に現れるようになっている。

さらにその影響は今年1月のジャカルタ中心部でのテロ、そして今年7月のクアラルンプール近郊とダッカでのテロ(日本人7人も犠牲)のように、

東南アジア地域にまでその影響が如実にみられるようになっている。要は軍事的にISを叩いても、

その反動でISの脅威が各地に拡散するという終わりの見えない戦いがそこにはあり、まさに「支配地域を失うISと世界に拡散するIS」という現象が生じてしまっている。

なぜ9.11同時多発テロから今年で15年が経った今日でもテロの脅威が世界で蔓延するのかといえば、その根底には、このISのように“テロの拡散”という現象が存在するからである。

図3:東南アジアへ拡大するISの脅威(http://understandingwar.org/map/isis-global-strategy-march-2016)

図3:東南アジアへ拡大するISの脅威(http://understandingwar.org/map/isis-global-strategy-march-2016)

(中編につづく)

和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

 - 社会ニュース ,