依然として欧州を悩ますテロリズム IS勢力縮小後も世界に拡散する危機

      2018/04/30

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今月16日から18日にかけ、ドイツ南部ミュンヘンで「ミュンヘン安全保障会議」が開催された。この会議は“安全保障分野のダボス会議”とも言われる国際会議で、世界各国の首脳や外相が参加し、日本からは河野外務大臣が出席した。安全保障分野では最も大きな会議の1つであることから、今年も多くのトピックが議論された。
そして、その中の1つに、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の問題があった。

支配領域を失ったIS戦闘員の行方は

ISは去年イラク・シリアで支配地域をほぼ100%失ったものの、なおもその行方が国際社会で懸念されている。特にイラクとシリアで戦っていた外国人戦闘員がそれぞれの母国へ帰還し、テロ攻撃を企てるのはないかとの懸念が広がっている 。最近、テロリズム研究に従事する筆者のもとには、イラク・シリアに生き残るIS戦闘員、帰還したとされる戦闘員の数などに関する統計が複数届くが、実際、そのような数を見積もること自体が難しいのが現状だと思われる。

難民・移民問題を複雑化させるテロリズム

しかし、そのような現状もあって、ISの崩壊後も欧州各国の懸念は変わっていないが、シリア内戦に影響される大量の移民・難民の欧州への流入は、この問題に深く根ざしている。
昨年、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が公表した統計によると、政治的迫害から国外へ逃れた難民や難民申請者、住居を失った国内避難民などの合計が世界で6560万人(うち難民2250万人、国内避難民4030万人、難民申請者280万人)に達し、統計開始以来最悪の数字を記録したとされる。2015年と比べて30万人増加したとされるが、特に戦後最悪の人道危機と言われるシリア内戦が大きく影響している。シリアの難民・国内避難民の数は2016年までにそれぞれ550万人、630万人にまで膨れ上がった。そしてこの難民増大をもたらしたシリア内戦は、欧州各国の安全保障を揺るがす問題へと発展していった。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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