トランプ大統領就任から1年 表面的な「アメリカ・ファースト」

      2018/04/30

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トランプ アメリカ・ファースト

(出典:whitehouse.gov)

トランプ氏が大統領に就任して、早くも1年が過ぎた。今年は秋に中間選挙があることから、トランプ氏は今のうちに出来る限り多くの政治的実績を残したいはずだ。しかし、この1年間でトランプ氏が残した偉大な功績とは何だろうか。大統領の職務は多岐に渡るため、小さなものを含めるのでいくつかは浮かび上がるかもしれない。しかし、外交・安全保障の世界において、筆者は1つも挙げることはできない。

行動が予測不可能なトランプ政権

就任前に心配されてきた日米トップ関係は、今のところ上手く機能していると言えるが、これは安倍首相がトランプ氏を上手く引き寄せたといった方がいいかも知れない。しかし、この関係がこのまま続くかは分からない。そう感じさせる1つの理由は、トランプ氏の行動が読めない、行動に一貫性がないことだ。アサド政権の化学兵器使用疑惑に基づくシリア空爆、エルサレムの首都容認と米大使館の移設決定、北朝鮮との緊張の高まりなど、この1年の出来事を去年の今頃に予想した人がいただろうか。

表面的なアメリカ・ファーストがリスクにつながる

この行動が読めないトランプ氏の政策を予測する上でキーになるのが、大統領選から強調してきたアメリカ・ファースト(米国第一主義)であるが、実は1年経っても、筆者にはその理念や主義といったものがはっきりと見えてこない。移民受け入れの制限や同盟国への負担要求、TPPやパリ協定からの離脱、アルカイダ系などジハーディスト集団への攻撃強化など、米国の利益と安全を守るため、分かりやすい行動でそれを強く示そうとしているように感じられる。

しかし、それが政治的、経済的に米国の利益と安全に寄与しているかは定かではなく、筆者には、「外を強調し過ぎるばかり、中身を深く考えていない表面的なアメリカ・ファースト」に感じられる。例えば、米国建国以来、最長の戦争となっている対テロ戦争において、トランプ政権によるイエメンやソマリア、アフガニスタンなどのテロ組織への空爆強化は、テロ組織を弱体化させる反面、憎悪や復習などの反米感情を新たに生み出し、海外に散らばる米国民の安全や、またホームグロウン(編集部注:国外の過激思想に共鳴した、国内出身者が独自に引き起こすテロリズム)など国内上の安全を脅かすリスクを高める。こう考えると、トランプ氏によるアメリカ・ファーストを色濃く出した政策が、却ってそれを脅かすリスクに繋がる可能性もある。

地政学リスクにおける最大の変数となった「トランプ・リスク」

そして、この行動が読めない、理念や主義がはっきりしないトランプ政権の誕生によって、地政学的なリスクは大きく変動した。まず、日本周辺の安全保障環境を考えた場合、昨今の状況を去年1月に考えた人がいただろうか。仮に(もし2期8年という任期の制限がなかったとして)オバマ氏がさらに1年間大統領をやっていたとしたら、おそらく現在のような緊張関係にはなっていなかったことだろう。日本国内でも、トランプ氏と金正恩氏による言葉の戦争の連鎖によって、在韓邦人の保護や日系企業の撤退などの議論が具体的に行われるまでに発展した。

また、去年12月にトランプ氏がエルサレムを首都と容認したことを受け、パレスチナを中心に各地で反米、反イスラエル感情が高まっている。昨今ペンス副大統領は、イスラエルの国会での演説の中で、来年末までに米大使館をエルサレムに移転させる計画を明らかにしており、今後中東におけるリスクがさらに高揚することが懸念される。

さらに、このようなトランプ・アメリカは、中国やロシアなどの大国にさらなる政治的余裕を与えている。政治家という視点から観た場合、プーチン氏や習近平氏は明らかにトランプ氏より経験があり、今後さらに他地域への影響力拡大を狙うことだろう。また、既にポスト・トランプの米国との関係を見据え、戦略的に対外政策を進める計画を練っているかもしれない。

去年同様、今年もトランプ・リスクというものが地政学上のリスクを変える最大の変数となるかもしれない.

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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