ピョンチャン(平昌)オリンピックにおけるテロの脅威

      2018/04/30

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韓国の人気俳優らによる聖火リレー(出典:平昌オリンピック公式Facebook)

2018年2月9日から25日まで、韓国北東部、北朝鮮との国境線にも近い平昌で、冬季オリンピック・パラリンピックが開催される。2014年2月のロシア・ソチ五輪の際には、その前年の秋から冬にかけ、南部ボルゴグラードなどで断続的にカフカス地域を発祥とするイスラム過激派によるテロ事件が断続的に発生(一部の声明で、実行組織はソチ五輪の中止を呼び掛けた)したが、ロシア当局の厳重な警備によりテロ事件は幸いにも起こらなかった。では、来月の平昌オリンピックを迎えるにあたって、テロのリスクを現段階でどう評価できるのだろうか。ここでは2つのリスクについて考えてみたい。

考えにくいイスラム過激派による宗教テロ

まず、9.11以降のテロというと、我々は直感的にアルカイダやイスラム国(IS)、またその過激思想の影響を受けた個人(ホームグローンやローンウルフなどと言われるが)によるテロを想像してしまう。しかし、平昌五輪におけるこの種のテロのリスクは、2020年の東京五輪と同じように考えて良いだろう。すなわち、イスラム過激思想の影響を受けた個人による単独的な、小規模なテロ(近年、欧州でよく見られるような)を十分に警戒しなければならないが、そのリスク(可能性)は欧米や中東・アフリカ、南アジア、東南アジアなどと比較するとはるかに低い。グローバル・ジハード運動に代表される国際テロ情勢の立場からは、彼らの中において北東アジアは標的として優先度が低いこと、また国内の移民・難民の状況からそのような過激派分子が台頭する可能性が低いことが言える。

北朝鮮を背景とする国家テロリズム

9日の南北閣僚級会談では、北朝鮮選手団の参加が合意されたが......

より現実的な脅威として我々が考えるのであれば、それは北朝鮮が絡む国家テロだろう。1988年9月〜10月に開催されたソウル五輪の10ヶ月前に発生した大韓航空機爆破テロ事件の目的は、ソウル五輪のボイコットを訴えたものだったとも言われている。しかし、瀬戸際外交と核開発を巧みに操作する金正恩氏が、費用対効果を考え、そのような行動に出る可能性は低いだろう。事実、本稿を執筆している今日になって、北朝鮮は平昌五輪への参加を発表し、韓国はこれを歓迎した。おそらく、金正恩氏にとって同五輪への参加は目的というより手段の可能性が高いが、韓国への接近を今になって見せたことからは、例えば、北朝鮮が国際空港や航空機、高速鉄道などを標的としたテロを実行する可能性は低くなったと言える。一方、平昌へ繋がるKTX(韓国新幹線)では、探知犬の配置や透視可能な荷物チェックなど国際空港さながらの警備が実施されるとのことで、韓国治安当局もテロに対して万全な警備体制を敷くことだろう。

しかし、トランプ・金正恩による言葉の戦争は依然として続いていることから、偶発的な衝突が発生し、緊張が一気に高まるリスクも想定しておく必要があろう。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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