深刻化した韓国人の中国離れ… その原因と今後の展開は?

   

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中国 国旗

(photo by Photos for Class)

今年10月、日本を訪れる韓国人旅行者数が過去最高を記録したという。日本政府観光局(JNTO)によると、先月までの訪日韓国人旅行者は521万7700人で前年同期より約150万人も増えた。一、中国人旅行者の数はもっと多い。外国人旅行者の中で最多となる622万4400人となっている。しかしなぜ韓国人の旅行者が突然日本を訪れるようになったのか。その原因はもちろん、THAAD配備問題をきっかけとする中韓関係の悪化だ。

今年3月、北朝鮮の度重なるミサイル発射を受けて韓国政府は高高度迎撃ミサイル「THAAD(サード)システム」を配備させた。THAADシステムはおもに飛来する敵国ミサイルを迎撃するものだが、同時に、ミサイルを探知・追跡可能な早期警戒レーダーとなっている。このレーダーの監視範囲が北朝鮮を丸々覆うばかりか中国国内まで及んでいるため中国当局は猛反発しているのだ。配備早々、国防部報道官は「強烈な不満と断固とした反対を表明する」と述べた。

これを機に領土問題や慰安婦問題などで日本を追及しようと結託していた中韓両国に亀裂が生じた。中国は報復措置として韓国への団体旅行を全面禁止にする経済制裁を発動。韓国を訪れる外国人観光客のうち約5割が中国人と言われており、韓国経済新聞社によれば、韓国側の被害額は15兆ウォン(約1兆5000億円)とされた。また報復措置は中国国内の韓国企業にも及んだ。韓国を代表する財閥企業の1つであるロッテが運営するロッテマートが、韓国南部・慶尚北道星州郡のゴルフ場をTHAADの用地に提供したとして、7割以上の店舗が営業停止に追い込まれたのだ。

一方、中国を訪れる韓国人旅行も激減した。中国の人気観光スポット「張家界」を訪れる外国人観光客の7割は韓国人で、2015年には27万人が訪れた(2位台湾は5万人。韓国メディア「NAVER」より)。しかし、THAAD配備の3月以降、韓国人観光客は60〜70%も減少。韓国専門の中国人ツアーガイドは「仕事がなくなった」として故郷に帰る者が続出したという。

一連の経済制裁に対して韓国国内では世界貿易機関(WTO)に中国を提訴するべきだとの世論が強まった。ところが、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「中国と協力を強化していかなければならない時だ」と一蹴。提訴しない方針を明らかにした。韓国大統領府が中国のTHAAD報復措置に対する見解を示したのはこれが初めてだったが、韓国ネチズンらは「韓国企業は全て中国から撤退しよう」「国交断絶しろ」と怒りが収まらない様子だった。

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「中国」が日本よりも嫌いな国に…両国の未来はどうなる?

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中韓両国が互いに訪れなくなった結果、その恩恵は日本が受けているのだが、旅行者が増加しただけではない。韓国シンクタンクの峨山政策研究院が行った「外国に対する韓国人の好感度調査」によると、韓国人の嫌いな国で中国が日本を抜いてはじめて2位になったのだ。これまで韓国人の最も嫌いな国は1位北朝鮮、2位日本というのが鉄板だった。しかし、中国の報復措置後、対中感情が予想以上に悪化していることが明らかとなったのだ。峨山政策研究院は「中国の強硬姿勢が改善しない場合、韓国国民の感情はさらに悪化するだろう」とコメントした。

ただ、関係改善に向けて何も努力していないわけではない。11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)では中韓首脳会談が開かれ、両国は関係回復に向けて取り組むことで一致。一定の成果をアピールした。専門家は中韓関係の改善が北朝鮮の核開発問題解決の糸口になると見ている。

しかし、かつてないほど溝が深まった両国民の関係修復は容易ではないだろう。そもそも韓国人の対中感情は日本ほど酷くなかっただけで、他のアジア諸国と比較すれば決して良くなかった。政府同士が仲直りをアピールしても、韓国人のボルテージが冷めるまではまだ時間がかかる。ただ、両国の経済力を比較すれば中国離れが長引くほど打撃を受けるのは韓国のほうだ。

両国関係が悪化してからすでに9か月近くが経っている。朴槿恵(パククネ)前政権が中国の習近平国家主席と連携して日本の戦争責任を追及していた日が遠い過去のようだ。日本政府が尖閣諸島を国有化した時、中国人による反日暴動は凄まじいものがあった。しかしその半年後には訪日旅行者数は元に戻った。中国人も意外とあっけらかんとしている。両国が再び手を取り合う日は一体いつになるのか。アジア各国もいい加減飽き飽きしていそうだ。

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古久澤 直樹
大学卒業後は特許事務所、出版社勤務を経てライター・ジャーナリストに転身。韓国を中心とした東アジア情勢を専門に扱う。各メディアに記事を多数寄稿している。

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