米国によるエルサレム首都容認とイスラム過激派の動き

   

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ツイッターで米国大使館のテルアビブからエルサレムへの移転の方針を発表したトランプ大統領

米国のトランプ大統領は6日、エルサレムをイスラエルの首都と容認し、テルアビブから大使館を移転させるという方針を明らかにした。トランプ氏は去年の大統領選の時から、エルサレムへの大使館移動を公約としてきたが、今回の決定の背景には、国内の支持層の期待に応える狙いがあるとみられる。しかし、この動きは歴代政権の外交方針とも一線を画すもので、イスラム圏諸国だけでなく、多くの欧州諸国や国連からも非難の声が殺到している。

米国の方針を発端とするデモや衝突、暴力の連鎖

その影響は既にさまざまな形で現れている。トランプ氏による決定後、ガザ地区やヨルダン川西岸では、パレスチナ人の若者とイスラエル治安当局との間で衝突が発生し、多くの若者が負傷した。イスラエル側も、ガザ地区にあるイスラム原理主義組織ハマスの拠点を空爆し、戦闘員2人が犠牲となった。

また、中東や北アフリカ、東南アジアのイスラム圏各国にある米国大使館前では、数百から数千人のデモ隊が抗議活動を行い、一部が暴徒化して治安当局と衝突する事態も発生している。

デモはイスラエル国内だけではなく、イスラム圏各国やイスラム系市民によっても行われた(写真は米国シカゴ内)

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インターネット上でのイスラム過激派の非難

そしてそれは、手段を厭わないイスラム過激派、特にイスラム国(IS)やアルカイダなどのサラフィジハーディストグループにも一定の影響を与えている。トランプ氏による決定後、ISやアルカイダなどジハーディストグループはそれを強く非難する声明を出している。

まず、シリア・イラクで支配地域を失ったISの支持者たちは、トランプ政権を非難し、欧米諸国での単独的な攻撃を呼び掛けるなどしている。しかし、以前のISのプロパガンダ活動と比べると、その頻度も内容も明らかに劣っており、領域支配を売りにしてきたISが今後も求心力を維持できるかは不透明な状況だといえる。

それ以上に、今回はアルカイダ関連組織の非難声明が目立つ。まず、その本体であるアルカイダ中枢は、イスラム教徒に対して“米国とその同盟国の権益を攻撃せよ”と呼び掛け、イエメンや北アフリカを拠点とするアルカイダ系組織も、全世界のイスラム教徒に対して、資金的・軍事的支援をするなどしてパレスチナ解放のために連帯するよう訴えた。また、カシミール地方やガザ地区を拠点とするジハーディストグループ、アフガニスタンの反政府勢力タリバンからも同様の声明が出ている。

ジハーディストにとっては好機 今後の国際テロ情勢への影響とは

会見を行うトランプ大統領(出典:whitehouse.gov)

会見を行うトランプ大統領(出典:whitehouse.gov)

現在のところ、今回のトランプ氏による決定に関連するジハーディストによるテロ事件は確認されていない。しかし、今回の出来事がジハーディスト達に自らの主義・主張をアピールするチャンスを与えていることは確かである。特に、それら過激派組織によるテロ事件というよりは、中東やアフリカ各国で社会経済的な不満を持つ若者などが、ISやアルカイダの過激主義の影響を受け(もしくは合わせるかのように)、自ら単独的に暴力的行動に出ないかが懸念される。筆者自身も、今回のトランプ政権による決定には反対の姿勢で、あえて過激主義を高揚させるだけであり、本当の意味での米国第一主義に繋がるのか?と大きな疑問を持っている。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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