何がミサイルを打たせたか?国際関係で読み解く北朝鮮の2017年

   

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金正恩

(出典:Wikipedia Photo by User P388388)

筆者が安全保障研究に従事するようになってから、まだ12年の歳月しか流れないが、その中でも今年は北朝鮮を巡る情勢が最も動いた年といえるだろう。2017年になり、なぜ北朝鮮はこれほどまでにミサイル発射実験を繰り返したのだろうか。その答えを明らかにするには、北朝鮮の金正恩氏に直接インタビューするのが最も簡単だが、それは現実問題として非常に困難で、おそらく国際政治上いくつかの要因が考えられるが、本稿ではその2つ可能性を考えてみたい。

国際政治のパワーバランスの変化:中国の台頭によるアメリカのプレゼンスの相対的低下


 
まず、第一に考えられるのが、パワーバランスの変化である。特にそれは我々日本が位置するアジア・太平洋地域で顕著であり、米中のパワーバランスの変化、パワートランジションというものは、今後の同地域の安全保障環境に大きな影響を与えることになりそうだ。長年、米国はアジア・太平洋地域の覇権を圧倒的なパワーでリードしてきたが、21世紀における中国の政治経済的な台頭が顕著になると、そのパワーは“相対的な”衰退を見せ始めている。そして、今後20年、30年後の世界においては、中国の経済力が米国を抜くとの試算も多くの調査機関から出ており、そうなれば日本周辺の安全保障環境も大きな変化を余儀なくされるかも知れない。

そのような環境(流れ)は、今日の北朝鮮にとっては決して都合が悪いものではない。近年、アジア・太平洋地域で「中国↑ 米国↓」といった流れが色濃くなっていることは、それだけ北朝鮮に行動の自由を与えている。それによって、北朝鮮は米国への敵対心を強調するだけでなく、核・ミサイル能力の向上を加速化させている。

また、中国にとって、北朝鮮は米国の政治的影響力を北緯38度線以南で抑えるという緩衝国家としての役割を果たしていることから、北京としても北朝鮮をそこまで雑に扱えないという現実もある。もしかすると、金正恩氏もそれを十分に熟知し、米中関係、米中のパワーバランスの変化を上手く利用することで巧みな外交を演じているのかも知れない。

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アメリカ・トランプ政権の誕生

一方、トランプ政権の誕生も大きな影響を与えた可能性がある。オバマ政権の米国は、“戦略的忍耐”という姿勢を堅持してきたが、トランプ政権はその忍耐は終わり、より厳しい姿勢で北朝鮮に対応していくことを強調している。北朝鮮にとっては、新しい米国が誕生したものの、その政権がより強硬的な姿勢で対応してくることから、それには断固とした姿勢で臨む、自らの正当性を強調するという考えがあるのだろう。それがミサイルの発射や核実験という形で表れているかも知れない。

トランプ政権の軍事的オプションも議論される中、来年も緊張した情勢が続きそうであるので、在韓邦人の保護を含めて、引き続き北朝鮮情勢の行方を注視していく必要がある。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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