南シナ海情勢の行方ー日本にとっての経済リスクとは

   

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超党派で作る米議会の諮問組織“米中経済安全保障調査委員会”は今月15日、2017年版の年次報告書を発表した。その中で同委員会は、政治経済的台頭を見せる中国と米国との軍事バランスが崩れることがあれば、中国は自らの国益追求のため、米軍を排除する行動に出る可能性があると警告した。また、習国家主席は歴代指導者の中で最も強く中国の影響力拡大を狙っており、経済力と軍事力を巧みに操ることで今後も影響力拡大を進めてくるだろうと警鐘を鳴らした。

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日本の海路の要衝である南シナ海

米中経済安全保障調査委員会が、このように中国の台頭に対して懸念の声を示すのは今回が初めてではない。過去の年次報告書でも同じような内容を発表している。しかし、中国の軍事的台頭が南シナ海や東シナ海に与える影響について懸念を示す声は長年聞かれるが、我々日本はそれにどう対処していく必要があるのかについては、あまり大きな議論になっていない。

特に、それは企業の世界においてである。当然のことながら、中国と経済的関係を全く有しない企業にとっては関係のない議論かもしれない。しかし、グローバル化の影響で海外進出する日系企業は増加の一途を辿っており、そして今回の報告書でも触れられている南シナ海は、日本経済にとって死活的に重要なシーレーン上に位置する。周知のとおり、日本へ向かう石油タンカーなどはそこを通過するが、南シナ海における中国の軍事拠点化の動きは近年目覚ましく、昨今では比大統領が“その問題に触れない方がいい”と言及するほどだ(今月開催されたASEAN首脳会議での議長声明では、過去に明記され続けてきた“懸念”という文言が消えた)。

APEC参加について会見を行うフィリピン・ドゥテルテ大統領(出典:pcoo.gov.ph)

APEC参加について会見を行うフィリピン・ドゥテルテ大統領(出典:pcoo.gov.ph)

ASEAN諸国の「忖度」で南シナ海で不利になる日本

この東南アジア諸国の動きは何を意味するのだろうか。南シナ海情勢を巡る動きは、中国とフィリピンやベトナムなどが当事者であり、そこにおいて日本は領土・領海紛争上の当事者ではない。よって東南アジア各国が中国へ譲歩的な外交姿勢を見せ続けることになれば、それだけ政治的にも中国有利な南シナ海情勢が展開させる可能性が高い。

自然に高まる日本の地政学的リスク

どの国も望んで軍事的衝突を起こすわけではない。南シナ海においても、米国や中国、東南アジア諸国は何か緊張が高まる実態が発生しても、リスクを回避する選択肢を選ぶ可能性が高い。しかし、近年の南シナ海情勢において、地政学的なリスクは自然に上昇傾向であり、その傾向は益々高くなっている。今すぐ何か起こるわけではないが、考えられるリスクについて、特に南シナ海は日本経済のシーレーン上にあることから、日本企業内での議論がより大きくなることを期待したい。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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