ラスベガス銃乱射事件を考える~事件はテロか犯罪か(後編)

   

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本記事は10/12(木)に公開になった「ラスベガス銃乱射事件を考える~事件はテロか犯罪か」の続きです。

前編は下記リンクをご参照ください。

ラスベガス銃乱射事件を考える~事件はテロか犯罪か

テロ行為における政治的意味合い

一方、両法による大きな違いは、文字通り“政治的または社会的”の箇所となるが、テロの一般的な定義というものはむしろ連邦法に近く、その暴力に“政治的意味合い”が含まれるかどうかが大きなポイントとなる。今回の事件でも、世界的なテロ研究者であるブルース・ホフマン(Bruce Hoffman)は、テロかどうかを区別する上で重要なのは“政治的動機”であると述べている。

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ラスベガス銃乱射事件はテロor犯罪 ??

ラスベガス事件の実行犯は既に死亡しており、実行犯に政治的動機や目的があったのかを断定することは難しい。また実行犯のテロ組織との接触や過激思想への感化など犯行前における事実情報をもとに、事件をテロ事件として扱う場合も多いが、現在のところ、ラスベガス事件の実行犯にはそういった過去も見当たらないとされる。そうなれば、今回の事件は多くの死傷者を出したにも関わらず、一般的なテロの定義からはテロ事件には該当しないとの判断になる。

しかし、現時点でそうであっても、後から政治的な意味合いを持つ事実が発覚すれば、それをテロ事件として扱うことは可能である。我々がこういった事件で注意しないといけないのは、“個人や組織の都合、またバイアスがかかった主義・思想などにより勝手にテロ事件と定義しない”ことである。テロリズムという行為は、一般的な犯罪と比べ、政府や社会に与える影響が大きい。よって、1つの行為をテロ事件として扱う場合には、実行犯の政治性というものを慎重に見極める必要がある。

テロ組織へは賢く警戒することが重要

ホワイトハウスのサラ・ハッカビー・サンダース報道官は2日に行われた会見において、本事件をテロリズムとみなすことに対して「時期尚早」としている。

今回の事件で、米当局がテロ事件ではないと強く断定していることは非常に評価される。仮に米当局が、“テロかもしれない”と曖昧な態度を示すと、それだけメディアや人々に与える不安や恐怖は大きくなる。テロ組織によるテロ行為とは、“その後の社会や人々の反応”にその成否が掛かっていることから、我々は死傷者の数が多く、物理的な被害も大きいという理由だけでテロと決めつけることは控えなければならない。それは、今回追認的な犯行声明を出したISなど国際的な過激派ネットワークを利するだけであり、彼らの罠にはまることにもなる。おそらく、今後もISなどはこのような事件が起きるたびに犯行声明などを出し、それに触発される個人も現れるであろう。しかし、今日の我々に重要なのは、このような事件を教訓として、何がテロかどうかを冷静に判断し、テロ組織に対して賢く警戒し、強く抵抗することであろう。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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