ラスベガス銃乱射事件を考える~事件はテロか犯罪か

   

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ネバダ州ラスベガスで1日夜、2万人が集まるコンサート会場に向け、白人の男(64歳)がホテルの32階の部屋から銃を乱射し、58人が死亡、500人以上が負傷する悲劇が発生した。この悲劇は、2016年6月にフロリダ州オーランドで発生した銃乱射事件(49人死亡)を上回る、米国史上最悪の銃乱射事件となった。事件で使用されたのは自動小銃「AK47カラシニコフ」で、殺傷能力が非常に高く、イスラム過激派組織イスラム国(IS)の戦闘員も使用していた。
 

追認的な意味でのISによる犯行声明、IS支持者による称賛メッセージ

また事件後、ISは「実行犯は数ヶ月前にイスラム教に改宗し、有志連合国への攻撃を強調するバグダディ指導者の呼び掛けに答えた」などと事件を賞賛し、今回の事件は「米国への報復である」とし、今後さらに米国人を標的として攻撃するよう呼び掛けた。しかし、現在のところ米当局が容疑者とISの関係を否定しているように、これらメッセージは事実上の追認行為に過ぎず、今回の事件を無理にテロリズムという枠内で議論することを避けなければならない。

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この銃乱射事件は“テロ”なのか??

しかし、一部メディアでも議論されているように、今回の事件で大きな議論になっているのが、これが“テロ”なのかどうかだ。この議論は、筆者を含めテロリズム研究者にとっては最もシンプルな問題である一方、最も答えるのが難しい議論でもあるだろう。なぜかというと、特に21世紀以降、テロが大きな国際問題になっているにも関わらず、その統一的な定義というものは未だに存在しないからだ。

例えば、米国連邦法では、テロリズムを「政治的又は社会的目的を促進するべく、 政府、 市民又は階層を威嚇又は強制するため、 人や財産に対し不法に軍事力及び暴力を使用すること」(Business Insider Japan 10月3日日本語版より)、と定義する。一方、事件が発生したラスベガスがあるネバタ州では、「一般市民の死亡や重傷を目的とした破壊、強制、暴力の使用もしくは未遂に関する全ての行為」(Business Insider Japan 10月3日日本語版より)、と定義しており、連邦法はネバタ州よりテロリズムという行為をより狭く定義している。

そして、この2つの定義を今回の事件に照らし合わせてみると、ネバタ州法上ではテロリズムになるが、連邦法上では該当しないことになる。これが今回の事件がテロになるかどうかという論争の源であり、テロリズムという行為の法的な難しさでもある。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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