朝鮮半島からの退避を考える基準とは何か

   

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今年に入って北朝鮮によるミサイル発射が後を絶たない。そして不確実戦略を採るトランプ政権の誕生で、北朝鮮をめぐる情勢はさらに不透明さを増している。そのような中、韓国へ進出する日系企業を中心に駐在する社員の安全をどう確保するかという懸念の声が拡がっている。

まず、北朝鮮を巡る安全保障環境について述べると、緊張関係が高まっているのは間違いない。北朝鮮は米国本土へ届くICBMの保有を実現化し、トランプ政権はオバマ前政権の戦略的忍耐から脱却し、中国は北朝鮮の単独的行動を制御できないでいる。このままこの状況が続くと戦争に発展するのではないかとの声も聞かれるが、その政治経済的な被害を考えると、米国としてもそう簡単に軍事行動に出られないのが現実である。

新しい「朝鮮半島危機」

出典:Twitter[@zeroinscw]

出典:Twitter[@zeroinscw]

1994年の朝鮮半島危機の時、当時のクリントン政権はシュリガシュビリ元統合参謀本部議長から戦争になった際の被害シミュレーションの結果報告を受けた。その内容は、開戦90日で、①米兵5万2000人が被害を受ける、②韓国軍に49万人の死者が出る、③戦争費用が610億ドルを超え、最終的には1000億ドルを超すという非常に厳しいもので、これによってクリントン政権の北への軍事的選択は消えたと言われている。

しかしそれから20年以上の月日が流れ、世界のパワーバランスの変化(米国の相対的な影響力の衰退)、北朝鮮の核・ミサイル技術の向上、自国第一主義を強調する指導者の誕生など過去の出来事と比較できない要素も多く出てきている。また戦争に発展する可能性は低くても、2010年11月の延坪島砲撃事件のように偶発的な事態が発生することは想定しておく必要がある。小規模な事態であっても、邦人の安全に影響が出ることは否定できないからだ。

CNN世論調査は軍事行動を支持、米国政府も意味深な行動を

では今後の朝鮮半島情勢を観るにあたってどのようなことを危機管理的視点から注視すべきであろうか。まず昨今の情勢からは、米国の世論調査が気になる。8月9日までにCNNが明らかにした情報によると、北朝鮮のミサイルの脅威が増す中、62%の国民が北朝鮮を深刻な脅威と感じ、その50%が必要な場合における軍事行動を支持したとされる。北朝鮮を深刻な脅威と感じる国民は3月の調査時の48%から大幅に増えている。また米国は今年9月から米国人の北朝鮮訪問を原則禁止にする措置を講じることを決定したが、これが単に北朝鮮へのプレッシャーを意味するだけなのか、もしくはその後の米国の何らかの行動を示唆するものなのか、注意深く動向を追っていく必要があるだろう。そしてこれは筆者の独自の見解ではあるが、これまでの国際政治の歴史から見てくると、紛争の当事者のうち軍事的な行動に出ようとする国家が、空爆を実施する国家の中にいる(もしくはその影響を受ける周辺国にいる)自国民に対して退避勧告を出した場合は、早かれ少なかれ一般人の退避を決める1つのトリガーポイントになると考える。今後の情勢の行方に注意が必要だ。

和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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