世界はどこに向かうのか(2)?ある安全保障学者の論考

   

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さて先週から今日の世界がどこに向かっているのかについて、政治リスクの観点から執筆しているが、ここではその続きを論じたい。

世界はどこに向かうのか?ある安全保障学者の論考

思想が脅威と化す今日の社会 世界情勢の悪化はさらに深刻に

思想が脅威と化す今日のテロ情勢、米国一極構造の終焉と新興国の台頭など世界情勢は流動的に変化している。しかし、先週にも述べたが、それらは世界を平和で安全な方向へ導くシグナルにはなっていないように筆者は考える。そして人間の安全保障分野で議論される気候変動や人口爆発、難民の増加といった問題は、世界情勢の悪化にさらなる拍車を掛けている。要は、伝統的安全保障、非伝統的安全保障それぞれの領域上の問題が、相互に影響を与える形で、同時進行的に世界の治安を悪化させる要因として働いているのではないだろうか(この問題には、今後さらなる実証的な研究成果が必要となってくる)。

予測を上回るペースで進む地球温暖化


シチリアの山火事

例えば近年の世界では、地球温暖化による具体的な影響が科学的な予測を遥かに上回るペースで見られ始めているという。昨今欧州では熱波が猛威を振るっており、イタリアやバルカン半島、東欧などでは気温が日々40度を超えるなどし、人々の日常生活に大きな影響が出ている。またそれによりシチリア島や南仏、ポルトガル中部などでは大規模な山火事も発生し、観光や農業など地元経済に悪影響を与えている。そして北極海では氷河の融解が進み、北極の生態系に急速な変化が生じ(ホッキョクグマの減少など)、南太平洋などでは海面の上昇によって島民が移動を余儀なくされる、いわゆる気候難民の問題も深刻化しつつある。

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今後の資源をめぐる戦争・対立

一方、人口爆発は今後の資源を巡る戦争、宗教・民族対立、テロなどのリスクを考える上で非常に重要な問題である。2017年の世界人口は約75億人で、2000年の61億人から14億人も増加し、今後も2050年に98億人、2100年には112億人に達すると予測されている。そしてこの急速な増加は先進国ではなく、アジア・アフリカの途上国を中心に起こるとされており、例えば水や石油など重要資源への需要、急増する若者の雇用・失業などの問題がより競争的になることが懸念される。単純に想像するだけでリスクを過大評価してはならないが、その急速な人口増加に見合うだけのインフラや制度が今の途上国に確立されている、また今後確立されるとは考えにくく、その増加によって内戦やテロ、暴動、また国家間の対立などのリスクが高まることが懸念される。

以上のように、先週から論じてきたことは筆者の憶測に過ぎない部分はある。しかし、想定されるリスクを自ら主導的に考え、そのリスクを最小化し、またその影響をできるだけ受けないための危機管理対策を講じていくことは、今後の日本人にさらに求められる意識ではなかろうか。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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