世界はどこに向かうのか?ある安全保障学者の論考

   

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筆者はテロリズム分野を中心とする国際安全保障論を研究・教育する一方、セキュリティコンサルティングの業務に日々携わっている。そして毎日のように世界のテロ情勢を分析している中で、最近1つの不安によく陥る。それは世界がどこに向かっているのかだ。

 この問いには、国際政治学者の間でも異なった多くの見解が聞かれることだろう。しかし、その識者がリアリストかリベラリストかに関係なく、実際の地球社会では良いことも悪いことも自然に進行している。そして国際安全保障論を政治的リスクの観点から捉える場合、筆者の頭の中には多くの不安定要因が駆け巡る。
 

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多くの不安定要因が考えられる未来の国際社会


 
まず筆者が研究分野とするテロ情勢について述べると、例えば昨今領域支配を失って弱体化するイスラム国(IS)であるが、その組織的弱体化はISの脅威の衰退とイコールではない。

今日において、テロの本質的な脅威はISかアルカイダかではなく、両組織の掲げる思想そのものであり、SNSなどの発達もありその思想に共鳴する組織や個人はここ数年増加傾向にある。

そしてその傾向は一種の思想戦として長期的に続くことが考えられ、ポストISにおいても新たな不安定要因として浮上する可能性が高い。

特に今後世界中でムスリム人口の増加が見込まれる中、高い教育を受けたにも関わらず見合った仕事に就けないことで社会的な不満などを抱き、それが個人の過激化をさらに誘発しないかが懸念される。

また国家間のパワーバランスという観点からも懸念すべき要因がある。

これはどこの国から観るかによって見解が違ってくると思われるが、例えば、米国の影響力が相対的に低下し、中国やロシアなど他の国の影響力が増すことで世界が多極化(無極化?)へ向かうという構造は、現実的な日本の選択という観点からは厳しいものになるだろう。

去年米国でアメリカファーストを掲げるトランプ氏が大統領選に勝利したが、トランプ氏は決して偶然に勝利したのではなく、我々日本人は今の内なる米国を現実的に、危機管理的に捉えることが戦略的にも重要であろう。
 

そして次回号に続きを書きたいと思うが、地球温暖化の進行(それに伴う異常気象の発生や砂漠化の拡大)、難民・移民の増加、人口爆発、資源の減少といった人間の安全保障上の脅威がさらなる打撃となり、世界をより不安定化、無秩序化させる要因になるのではないかと筆者は強く懸念している。

このような事を想定して、日本の国益と邦人の保護というものをさらに真剣に考える時期に来ていると筆者は考える。
 

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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