東京五輪におけるテロの脅威〜通信技術の急速な発展とテロリスク〜

   

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東京五輪の開催までちょうど3年となった。この問題は世界的なスポーツイベントであるオリンピックを2020年にホストする日本にとって、最も国民が心配する問題であろう。

最近は日本の世論でも、その時における国際テロ情勢に照らして、例えばイスラム国(IS)やアルカイダのメンバーが東京五輪を狙ったテロを計画・実行しないかなどの議論が多く交わされるようになった。

当然のことながら、危機管理の観点からそのようなリスクに対しても十分な対策を講じていかなければならない。

国際的なイベントにおけるテロ事件、関連する事件(参考)

1972年9月:ミュンヘン五輪 パレスチナ武装組織「黒い九月」が選手村へ侵入し、イスラエルのアスリート11名が殺害された。

1996年7月:アトランタ五輪 アトランタの五輪百周年記念公園に仕掛けられた爆弾が爆発し、1名死亡、100人以上が負傷した。白人至上主義の男を逮捕。

2005年7月:グレーンイーグルスサミット ロンドンの地下鉄とバスを狙った同時爆破テロが発生し、56人死亡(ロンドン同時多発テロ)。パキスタン系英国人数名を逮捕。

2008年8月:北京五輪 東トルキスタンイスラム運動の活動が活発化。中国雲南省昆明市で16人が死傷したバス連続爆破事件などが発生。

2010年7月:南アフリカワールドカップ スペインとオランダの決勝戦最中、ウガンダのカンパラで

サッカーのパブリックビューイングをしていた大衆を狙った爆破テロ事件が発生し、64人が死亡。ソマリアのイスラム過激派アルシャバブが犯行声明。

2010年12月:ノーベル賞授賞式 授賞式が開催されていた会場の近くで北欧初の自爆テロが発生し、犯人のみ1人死亡。犯人はイラク系スウェーデン人。

2012年8月:ロンドン五輪  英国内でテロ事件は発生しなかったが、スペイン・ジブラルタルで五輪のパブリックビューイングをしていた大衆を狙ったテロ未遂事件が発覚。チェチェン系2人、トルコ人1人が逮捕。

2014年2月:ソチ五輪 開催期間中はロシア当局の厳重なテロ対策によりテロ事件は発生しなかった。しかしその直前の2016年秋から冬にかけ、南部ボルゴグラードで立て続けに爆破テロ事件が発生。

2016年8月:リオ五輪 開幕直前の7月21日、リオ五輪でテロを計画していた疑いでブラジル人10人が逮捕。

容疑者らはISの思想や考えに傾倒し、IS関連のウェブサイトを頻繁に閲覧していたため、数週間前より治安当局による監視の対象になっていた。

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脅威となるのは通信技術の急速な発達

TwitterやFacebookから締め出されたイスラム国は、TelegramやWhatsAppといった暗号化されたプラットフォームに目を向け始めた。

しかし、そのようなイスラム過激派のメンバーが日本国内に入国し、十分な計画のもとテロを実行するというシナリオはあまり考えられないと筆者は考える。

そもそも、9.11以降国際的なテロ対策は非常に強化されており、テロ組織のメンバーが日本国内に入国することも決して簡単ではない。

また日本国内にはムスリム人口も非常に少なく、それに関連する移民・難民問題、社会的な差別などが大きな問題ともなっていない。

近年のテロ情勢に照らしてより考えられるリスクは、例えばISの過激思想の影響を受け、自らが持つ社会的不満などを暴力という形で爆発させる個人の台頭だろう。

フェイスブックやツイッター、インスタグラムなどのSNSの発達によって、個人がテロ組織のメンバーと連絡を取ったり、情報を共有したりすることは簡単になっている。

またイスラム過激思想とは別に、何かしらの政治主義、民族主義、反グローバル主義などを掲げるグループが、SNSを通して国境を超えるネットワークと化し、

それによって世界的なイベント時により暴力的な行動に出る可能性も考えられるだろう。

東京五輪のテロ対策を考えるにおいては、その時におけるテロ組織の動向だけでなく、いかに通信技術の発達が治安情勢に影響を与えているかについても注視する必要がある。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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