イラク・モスルとフィリピン・マラウィの類似点

   

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 先週、イラクのアバディ首相はモスル奪還作戦での勝利宣言を行った。

モスルはイスラム国(IS)にとって重要な拠点であったことから、その喪失はISにとって大きなダメージとなったことは間違いないだろう。

一方、イラクから遥か東に位置するフィリピン南部ミンダナオ島のマラウィ(Marawi)では、5月下旬以降、ISに忠誠を宣言するマウテグループ(Maute Group)とイスニロン・ハピロン(Isnilon Hapilon)率いるアブサヤフ(Abu Sayyaf)のメンバーがフィリピン軍と軍事的に衝突している。

このマラフィの町を占拠するIS系グループには、マレーシアやインドネシアなど近隣諸国だけでなく、サウジアラビアやパキスタン、チェチェンやモロッコなど遠方からの外国人戦闘員も参加しており、従来からある地域紛争をグローバルな視点から観ていく必要性が高まっている。

 

マラウィでIS系グループがやろうとしているのは”占拠”ではなく、”実効統治”

 そして昨今マラウィで発生していることは、単なるIS系グループによる町の”占拠”ではない。

政府軍による町の奪還作戦と捉えた場合、外形上、IS系グループが行っているのは町の占拠と見えるかも知れないが、問題の核心はそんなに単純ではない。

5月下旬以降、マウテグループなどがマラウィで行ってきた行為を振り返ると、警察署や市庁舎への攻撃、教会など宗教施設への攻撃、刑務所襲撃と囚人の解放、銃器の奪取と収集、斬首など残酷な暴力実行、そしてISの旗を町中に掲げるなどである。

ふと振り返ると分かることだが、これらの行為はISがイラク・シリアで勢力を拡大する時にやっていた行為と類似するものが多い。

特に町中にISの旗を掲げる行為は非常に特徴的で、おそらくマウテグループらはその後、行政府の設立や課税制度の導入、貨幣の発行など、ISがイラク・シリアで行ったようなプロセスを踏んでいこうとする強い意志を持っていると考えられる。

そう捉えると、マラウィで発生しているのはIS系グループによる単なる占拠とだけで括ることはできず、”実行支配、実行統治を行っていく過程での占拠状態”と表現するべきであろう。

今後の動向がどうなるかは誰にも分からない。

しかし、IS系グループというものは、今後も政府による統治力が脆弱な地域を探し出し、そこを拠点として模擬国家的な行為を拡大させていくことが考えられる。

和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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