現在日本におけるテロについての考え方

   

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毎年公刊されることになったテロ要覧、テロへの関心が増す

昨今、公安調査庁が毎年発行する「国際テロリズム要覧」の最新号が発表された。

そしてTBSのJNNニュースが27日に配信した情報によると、今年の国際テロリズム要覧には、

”2020年の東京オリンピック・パラリンピックを前に日本も最大限の注意が必要”と書かれ、

その理由は、”去年1年間のテロの特徴として欧米では件数と発生国が増加“しており、

”イベント会場や飲食店など治安当局による警備が手薄なソフトターゲットが標的”となり、

また”手段として爆発物や銃などに代わり、ナイトや車両といった身近なものを使ったテロが増加”しているからだという。

(以下参照、公安調査庁「日本もテロに最大限の注意必要」 )

国際テロリズム要覧は筆者も国際テロリズムに関する論文等を執筆するときに度々お世話になる書物であり、

公安調査庁による上記の分析も危機管理的な視点からは重要な指摘である。

国際テロリズム要覧にも上記についてのさらなる詳細が十分な量で掲載されていることだろう。

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テロリズムの歴史、用語の意味を忠実に解釈することが重要

しかし筆者はここで、この公安調査庁による指摘を1つの例に、現在日本におけるテロの考え方について、学術的なテロ研究の側面からいくつか考えてみたい。

まず第一に確認しておきたいのだが、テロリズム研究の歴史から言えば、「日本国内でもテロは起こるのか?」という考えがそもそも正しくない。

戦後の日本でも左翼系ゲリラ等によるテロ活動はみられ、決して日本がテロと無縁だったわけではない。近年欧米でテロ事件が相次いでいることから、

”日本でもテロが起こるのか”という風潮が社会で流れているが、筆者には危機感を失った現代日本人の実状を如実に表しているように感じられる。

次に、この公安調査庁による指摘は、テロの”標的”、テロの”手法”を強調することにポイントがある一方、部分的にも”イスラム過激派”による事件を想定し

ている感がある。昔、国際テロ組織アルカイダのメンバーも一定期間国内に滞在していたとされる中、

イスラム過激派によるテロが五輪を迎える日本で発生する可能性もゼロではない。しかし、イスラム過激派という文言に注視することも重要である。

おそらく公安調査庁が脳裏に浮かべるイスラム過激派によるテロとは、イスラム国やアルカイダによるものだと思われるが、

サラフィージハード主義を掲げる両組織だけがイスラム過激派ではない。むしろ両組織はそのごく一部であり、

イスラム過激派にはハマスのように目標が地域に限定された組織、また暴力的な手段とは距離を置く組織等も含まれる。

日本の行政府から発行される国際テロに関する書物等には、イスラム過激派という文言が時に見られるが、

その言葉の定義を十分に考慮に入れて使い分けることも重要である。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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