今日世界で問題となっているのは「過激主義のイスラム化」

   

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「すべてのイスラム教徒を殺害する」欧州で多発するローン・ウルフ犯罪


最近、英国やフランス、ベルギーなど欧州各国でテロとみられる単独的な暴力事件が相次いでいる。

マンチェスターやパリ、ブリュッセル、そしてロンドンでは短期間に3回と後が絶たない。

そしてこれらの事件の多くは、アルカイダやイスラム国が掲げるサラフィージハード主義の思想やブランドに少なからず影響を受けた個人による暴力であることから、欧州社会の中ではイスラム教徒への風当たりが強くなり、ムスリムへの嫌がらせやヘイトクライムなども増加傾向にあるという。

今月19日、ロンドン北部のフィンスブリーパークにあるムスリム福祉施設の近くに車が突っ込み、多数が負傷した事件では、実行犯の白人男性は「すべてのイスラム教徒を殺害する」との意思を持っていたとされる。

「イスラム教はテロを正当化する」イスラム恐怖症が漂う欧米諸国

周知のとおり、9.11同時多発テロを大きな転換期として、国際社会ではイスラム過激派勢力によるテロにどう立ち向かうかが重要な課題となった。

そして米国によるアフガニスタン侵攻、イラク戦争、米軍のイラクからの撤退、アラブの春、シリア内戦、イスラム国の台頭、イスラム国の衰退など、イスラム過激派との対峙が今日にいたるまで続く中、世界各地ではアルカイダやイスラム国、またはそれらの思想に影響を受ける組織や個人によるテロ事件が毎日のように発生している。

それによって欧米諸国を中心に、”イスラム教はテロを正当化する”、”イスラム教は怖い”など一般のムスリムへの風当たりが強くなり、一種の”Islamophobia(イスラム恐怖症)”が漂うようになってしまった。

実態は「イスラムの過激主義化」ではなく「過激主義のイスラム化」だ


しかし、そのように陥ってしまってはテロリストの思う壺である。

イスラム国などは社会上、宗教上の分断を狙い、それによって白人至上主義者、キリスト教原理主義者などによる報復が発生しているが、何も過激主義というものはイスラム教だけにあることではない。

冷静になって考えることが重要であるが、例えばミャンマーやスリランカには仏教過激主義者が存在し、アフリカのウガンダには反政府勢力、神の抵抗軍(LRA)が活動する。

LRAはキリスト教過激主義組織である。

よって、今日イスラム過激派によるテロが多いことから、”イスラムの過激主義化”なる風潮が国際社会の人々の中で漂っているが、その実態は、”イスラムの過激主義化”ではなく、過激主義がイスラムに焦点を置いて見られるという、”過激主義のイスラム化”である。

”イスラムの過激主義化”のような風潮は返って多くの対立や不和を助長し、さらなる混乱に繋がる危険性がある。

なぜイスラムとテロがリンクしてしまうのかについては別途分析を要するが、これ以上の一般ムスリムへの抑圧や人権侵害に繋がらないためにも、我々現代人は冷静に考える必要がある。

和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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