徐々に復活への兆しを見せるアルカイダ

      2017/05/20

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ビンラディン

(出典:Twitter[@CounterTerrorEA])

近年、世界中のテロ研究者の間で活発に議論されるトピックがある、アルカイダの復活だ。

ジョージタウン大学のBruce Hoffman教授や南洋工科大学のRohan Gunaratna教授、

そして安全保障分析のコンサルティング会社Soufan GroupのトップAli Soufanなどの有名なテロ対策専門家は、このトピックについて頻繁に持論を述べている。

筆者も昨今、「イスラム国とアルカイダの行方 〜対立か共闘か、もしくは合併か〜」というタイトルで専門誌「治安フォーラム(2017年6月号)」に論文を掲載したが、

これは今後の国際テロ情勢の行方を大きく左右するかもしれない、極めて重要な議論だ。

ISの台頭、ビンラディンの死…アルカイダの勢いに陰りが

ビンラディン

周知のとおり、シリア内戦が激化し、2014年6月にバグダディ容疑者がイスラム国(IS)の建国を一方的に宣言して以降、

国際社会の焦点はISに集まるようになり、国際テロ組織アルカイダは既に弱体化した過去の存在かのような幻想が国際社会に漂うようになった。

確かに、9.11同時多発テロを実行し、オサマ・ビンラディンが親玉であったアルカイダが“組織”として弱体化したのは事実だろう。

しかしそれ以降のテロ情勢をみれば分かるが、そのアルカイダのブランドやイデオロギーは、

逆にサイバー空間を一種の聖域として拡散し、2005年あたりから深刻化するホームグローンテロの発生や、

AQAP(アラビア半島のアルカイダ)やAQIM(マグレブ諸国のアルカイダ)など各地におけるアルカイダ系組織の台頭に繋がった。

そして2011年5月のオサマ・ビンラディンの死亡、また何よりイスラム国の台頭によって、

拡散するイデオロギーとしてのアルカイダにも陰りが見え始めたかのように思われたが、

昨今のイスラム国の組織的な弱体化が顕著になるにつれ、アルカイダが復活に向け密かにそのステップを踏んでいる。

アルカイダは徐々に復活への兆しを見せている

AQAP

アルカイダが、9.11のような大規模なテロを再び実行するような組織に戻ると考えることは、今の段階では現実的ではない。

しかし、Ali Soufanによると、近年アルカイダはアフガニスタンで勢力を少なからず復活させ、

アルカイダ勢力もイエメンに4000人以上(AQAPの勢力)、ソマリアに7000人以上(アルシャバブの勢力)、

そしてシリアに20000人(Hay'at Tahrir al-Shamの勢力)いるとされる。

またマリなどサハラ地帯で活動するAl-MurabitunやAnsar dineなど3組織が今年3月に合併を表明し、

新たにアルカイダへ忠誠を誓う組織“Jama’at Nusrat al-Islam wal Muslimeen”として活動を開始している。

「ビンラディンの息子」が今後指導者に?

さらにそういった傾向に歩調を合わせるかのように、近年ビンラディンの息子であるハムザ・ビンラディンの動向に注目が集まっている。

ハムザ・ビンラディンのものとされるビデオはこの2年間で4回公開されているが、

今月中旬に公開された最新のメッセージでは、父親を継承して欧米へのジハードを継続する意志を改めて表明し、

特に米国人とユダヤ人を標的とする一匹オオカミ型のテロを呼び掛けた。

2015年に公表された動画の中で、現在のアルカイダ指導者であるアイマン・ザワヒリ自身がハムザを未来の後継者の1人として誇り高く紹介していたことから、

オサマの息子であるという威厳とブランドを武器に、ハムザが今後アルカイダを主導していくシナリオは十分に考えられる。

イスラム国の弱体化に伴って、アルカイダの動向を追う重要性は増してきている。

父・オサマ・ビンラディンと幼少期のハムザ氏(右)

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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