専門家に聞く米中貿易摩擦(上)ー米中両国の思惑ー

   

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昨今報道でよく取り上げられている、“米中貿易摩擦”。

3月22日にトランプ大統領が500億ドル相当の中国製品に関税を課すことを決めたことから始まり、現在に至るまで激化の一途を辿っている。

米中貿易摩擦の激化により、日本を含め、世界秩序にどのような影響があるのかについては数多くの人が関心を持つところである。

このような状況を受け、米中貿易摩擦を両国はどのような認識枠組みの中で行っているのか、両国の視点を識者に伺った。

中国外しのTPPへの対応を検討していたことが貿易摩擦問題における中国の冷静な対応に活かされている

アジア経済研究:国士舘大学平川均教授

私は、新聞報道を見る限り、中興通訊(ZTE)の制裁問題は予想外の印象がありますが、総じてアメリカに対する中国の対応がかなり冷静で、アメリカの制裁関税が中国にどのような影響を与えるかを中国政府として綿密に考えている印象を受けています。これには、習近平体制の成立時がちょうどTPP交渉が進められた時期で、それが中国外しであったため、対策のひとつとして「一帯一路」構想が生まれたという背景があります。この時の経験が今回の対応に活かされていると思うのです。

アメリカ主導のTPP交渉が進む中で、中国はTPPが実現した際にどのように対処すべきかを交渉の外側から眺めるほかありませんでした。こうして、TPPに対抗し得る地域連合の構想が生まれたのだと思います。実際に「一帯一路」では70以上の国と協定を結び、AIIB加盟国もADBの加盟国を上回る80か国に達しています。中国のトランプ大統領の脅し外交に対しては、そうした経験を基に単なる譲歩ではなく、中国側の策を練ったうえでの対応がなされていると思います。

私は、以前から対中強硬派で中国製品への高関税を主張していたナバロ国家通商会議委員長に注目していて、中国からすればTPPもトランプの保護主義もその本質では違いがなく、トランプの脅し外交は「一帯一路」の意義を強めるものだと考えています。TPPへの対応を綿密に練っていた中国からすれば、貿易摩擦も成長する中国の抑え込み政策である点で変わりはないからです。

実際、2013年の習近平の国家主席就任後、急務の国際課題は対米政策でした。中国はアメリカとの貿易摩擦がいつか起こると当時から想定しており、当時すでにアメリカとの貿易構造を分析し対策を練り、他方で新たな外交政策を準備していたはずです。

 

トランプ大統領は単にディールを楽しんでいるが、通商顧問は中国を敵視している

現代中国政治:東北文化学園大学王元教授

中国にとってこれまでのトランプ大統領の対応はある程度想定内のことであったでしょうが、最近の状況を見ていると、アメリカが中国製品2000億ドルに追加関税を課すと警告するなど、多少想定外の動向も見られ、本当にアメリカが制裁関税を発動したらどうなってしまうのか分からない状況が続いています。このような想定外の事象が多数出てきたことによって中国がこれから採る方法は変わっていくかもしれません。

これまで、アメリカの主張が二転三転する場面が多々見られますが、この原因の一つには、通商交渉の責任者がはっきりしないことが挙げられます。実際トランプ氏は最初、大きな目的がなく、単にディールを楽しもうとしていました。トランプ氏は相手方もディールを好んでいると想定して物事を進めていますが、全ての政治家がディール好きではありません。

また、左遷されたナバロ国家通商会議委員長の復活は不吉です。彼が貿易摩擦問題を主導することにより、貿易戦争になる可能性が高くなりました。貿易以外の領域まで拡大すれば両国にとって災難でしょう。貿易摩擦問題が激化している一番の原因はアメリカにあると思います。


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トランプは「ビジネス大統領」

中国経済・政治:杏林大学劉迪教授

トランプ大統領の外交政策及びスタイルは20世紀以来のアメリカ大統領と一線を画し、「ビジネス大統領」のカラーを思う存分発揮しています、彼は「アメリカ第一主義」を掲げ、主要貿易パートナーに貿易戦を仕掛けることを惜しみません。しかし、彼はアメリカ経済問題の根本をよく理解していません。アメリカこそ構造改革を行うべきではないかと多くの方が指摘しています。

トランプ大統領の「アメリカ第一主義」とは、自国の戦争力を維持するためには、たとえ他国の成長を公然と妨害、阻止することになってもよいというものです。アメリカは中国に、「中国製造2025」を取り下げるよう申し入れましたが、これは「アメリカ第一主義」の本質を暴露することになりました。

現在から2030年代までの米中の攻防は落ち着かないかと思われます。中国の成長速度は衰えているにも関わらず一定のレベルを維持するでしょうし、イノベーションへの投資、軍事予算などは引き続き増大していくでしょう。いずれ世界一の経済大国は米中交代になると見ています。ただし、米中とも深刻な国内対立、分裂という問題を抱えています。如何にこれらの問題にうまく対応するかは両国にとって重大な問題です。

 

有識者からは、中国外しのTPPが進む状況下で、一帯一路を打ち出すことに成功した自信から冷静な対応をしている中国と、トランプ大統領がディールの中で単にゲームを楽しんでいるアメリカという、対照的な両国のあり方への見方が示された。報道では、アメリカに振り回される中国という構図が散見されるが、実際はどちらが主導権を握っているのか、引き続き注目がなされるところである。

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