【連載】ロシアの実像を探る (5)ロシア人との付き合い方 後編[茅野 渉]

   

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「お酒好き」「ちょっと怖い」そんなことを言われることも多いロシアの人びと。前回の記事ではロシア人の気質や、ロシアでのビジネス上の「約束」「契約」の基本的な考えをご紹介しました。今回は、日系企業との間でトラブルが発生したロシア企業の対応から、そこからさらにロシア人の「お金」「信頼関係」観に迫ります。

前回の記事はこちら(ロシア人との付き合い方 前編)

納期遅延が発生…そのとき、ロシア企業の対応は

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ある輸出契約で、日本企業としてはあるまじき納期遅延を引き起こしたことがありました。遅延発生からしばらくしてロシアの顧客から呼び出しが懸かります。契約書に従えば、遅延への罰金として相当な金額を支払わねばなりません。

どう言い訳するかをあれこれ考えながら相手のオフィスに出向き、社長の部屋に入ります。社長は待ち構えていました。けれども交渉のテーブルには契約書のコピーが置いてありません。代わりにウオッカの瓶が2本立っているだけです。

交渉開始となりました。

社長は穏やかなもの言いながらも、「兎も角一刻も早く何とかしてくれ」と要求。当然のことですね。こちらは、何とかベストを尽くすからもう少し待ってくれ、と首をすくめながらの懇願一本槍。

そのうちに、「せっかく来たんだから、まあ一杯やれ」と勧められ、日中からウオッカを何杯も。契約の話などどこへやら、社長の若い頃の思い出話に花が咲き、真昼の小宴を切り上げてドアに向かう頃には、もう一度だけ「頼むぜ」と一言。そして、そのまま何事もなく送り出されました。

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契約通りに要求しようと思えば、彼等は罰金支払いの請求書をこちらに突き付けることができたはずです。

しかし、社長は一度もそのことに触れませんでした。話がこれで終わったのは、ほどなく遅れながらも商品納入が完了してなんとか実害なく物事が収まったからでしたが、それまでは社長も相当に不安だったのだろうと思います。

その中で、すぐさま契約に訴えて騒ぎ出そうとはしないところに、ロシア人の性質の一端を垣間見たような気がしました。

こうした点が、日本人に「浪花節的」、「ウェットだ」とロシア人が評される所以です。19世紀のロシアの大商人の中には、信頼できる相手とは契約書を交わさない、そんなものは不要、と豪語していた者も居たそうです。

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