地方はマイナス成長、だけど中国のGDP成長は上向き?

   

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中国国家統計局が今月18日、2017年の実質経済成長率(GDP)が政府目標を上回る6.9%増を達成したと発表した。19日の日本経済新聞でもこのニュースを報じられ、「7年ぶりの加速」という見出しもつけられた。当該記事は、中国国家統計局という中央政府機関の情報を元にして作成された記事である(日本経済新聞2018/1/19)。記事では、企業や個人の債務に焦点をあて金融リスクの増大も指摘されている。ただ、ここでの記事では将来起きるリスクについては触れられてはいるものの、現在の中国国内の状況については言及はされていなかった。

【外部リンク】中国、政治主導の高成長 GDP昨年6.9%増  7年ぶり加速 借金依存は深刻に
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO2585653018012018EA2000/

地方政府の経済成長がマイナス成長だったはずだが

昨年、習近平政権の強い指導の下で地方政府の統計水増しの是正が迫られた。結果、2014年における全国の省・市・自治区の中で7位だった成長率だった遼寧省が2017年には前年比でマイナス20%成長であったことが明らかとなった(日本経済新聞2017/8/21)。また、遼寧省だけではなく天津市、内モンゴル自治区が続いてGDPが過大推計されていたことがその後の政府発表や報道で明らかとなっている(出典:新浪総合2018/01/11[天津]・South China Morning Post 2018/01/07[内モンゴル自治区])

そもそも、中国を専門とする人の間では、政府の発表する数字を額面通りに受け取る人はまずいない。中国の統計やGDPなどの経済成長率を示す数字を見るときは、政府がその数字を出す背景や意図を吟味したうえで何を示している数字なのかを判断していかなければならない。本来統計処理された数字とは社会や経済の実態をとらえるという目的を持つが、それ以外に中国では例えば「成長をしているという証拠をみせ国内・地域の人々に安心感を与えたい」という意図が組み込まれて作られる、ということもある。

ゆえに、今回のGDPの速報においても上記のマイナス成長をしていた地域について政府が言及しているところを注意して見なければならない。

「全国統計は信頼性がある」とする中央政府

寧吉喆

中国国家統計局・寧吉喆局長(出典:www.ndrc.gov.cn)

日本経済新聞では取り上げられていなかったが、2018年1月18日の中国国家統計局寧吉喆局長のGDP速報値を発表した会見では「地方政府による水増しがあっても全国統計には信頼性がある」ということも述べられた(澎湃新聞2018/1/18)。中国の多くの地域の統計データが実態経済を捉えており、また、統計処理の方法についても習近平国家主席が強い改善要求を行ってきて成果があったとしてこのように主張する。

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統計はあくまで誰かによって造られたもの

しかし、この発言をうけてもやっぱり注意しなければならないのは統計上の数字が誰によってどのように集められているかだ。いくら中央の政府機関によって厳格に管理統制をしているとはいっても、数字を集めるのは中央政府だけではない。地方政府や (国有)企業、はたまた末端の行政職員だったりする。

集計手法の的確さなど技術的な問題以前に、中国政治学でよく議論されるのはこういった数字にて見えやすい業績は職員や組織のリーダーの出世(降格)や次年度の予算などに強く影響することである。こういったインセンティブがあるからこそ、中央政府がいくら必死に正確な数字を出すように要求をしても、末端で、中間で、上級で、どこかで歪みが出てしまう可能性が高いのである。

ここで中国政府の発表する統計の全てが嘘だというつもりはないが、少なくともこういうような事情を念頭に置きつつ数字を観ていくべきではないだろうか。

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橋本 誠浩
橋本 誠浩(はしもと ともひろ) 東北大学法学部法学科卒業(法学学士)、浙江大学公共管理学院AFLSP2015(公共管理修士)修了。専門は、中国政治。特に現代都市社会について政治学の観点から分析を行っている。中国で3年過ごし、現在仙台を拠点に研究活動を継続。

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