習政権が挑戦する一帯一路政策の国内要因とは?

   

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一帯一路政策(シルクロード政策)については、習近平政権が発揚してから多くのメディアが取り上げてきた。中国の独自の経済圏の構築ということで、とりわけ米国を念頭に置いた経済圏構想に帰属意識のある日本において、各メディアはこのチャレンジを常に注視してきた。

連日の報道では、中国のこの政策に関連する外交、経済政策の成果が批評されてきたと思う。ただ、多くの報道はその成果や中国政府の公表する表面的な意図のみを紹介している傾向にある。今回は、なぜ中国独自の経済圏を構築するに至ったのかを、中国国内の視点から考えてみたい。

中国の経済発展は今も昔も外国に多く頼っている

鄧小平による日本の製鉄工場視察

鄧小平による日本の製鉄工場視察(出典:新日鉄住金 NIPPON STEEL MONTHLY 2007. 11より)

まず、この一帯一路政策のはじまりを理解するためには、中国の経済発展の中身を知る必要がある。巨大な国がわずか数十年でGDP世界第2位の国になったのは、鄧小平による改革開放(1978)以降の経済成長が一貫して資本・技術を外国へ大きく依存したものであったためである。

その状況は、過去40年間基本的に変わっていない。少し前のデータだが、2008年8月4日には中国国家統計局が中国経済の外国依存度が60%を超えると発表している(http://www.sina.com.cn 2008年08月05日 04:08 京華時報)。また、中国経済を支える低賃金といわれた中国人労働者たちも、その多くは国内にある欧米日企業の工場で働いているのである。

中国国内の経済危機と成長鈍化

その後、自国の経済がある程度成長してくると物価と賃金の上昇が中国の外国頼みの経済成長を確実に圧迫した。それに加えて、先の経済危機などは中国国内の外国企業の活動(第二次産業)に少なからぬ悪影響を与えた。

賃金の上昇と先の経済危機は外国企業にとっては労働者の雇い控えをするには十分な理由だった。

また、一定の経済成長により都市部での仕事が多様化し、労働者も仕事を選り好みするようになる。例として筆者の知り合いが経営する中国国内の会社でも、製造工場での賃金上昇によって従業員を雇いづらくなったり、

また労働者たちもそれまでの低い賃金では働かず、都市部の飲食店など「華やか」な職を選ぶようになったと聞いた。このように低賃金の労働者を原動力とした経済成長が減速していく現象は、「中所得国の罠」として説明される場合もある。

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一帯一路政策は、中国の新しい外国依存の形

そうはいっても、中国全体で見れば今後さらに発展しなければ自国民全体に経済成長の利益はいきわたらない。経済危機と成長鈍化のダブルパンチを食らった中国政府は、国内で広がる経済格差拡大や成長鈍化に伴う社会不安を抑えるためにも、更なる経済成長の方策を考える必要があった。方法は、自国内で発展を促進(内需の拡大=国内消費拡大)させるか、これまでとは違う形で外国に依存するかである。

しかし、それまで40年間外国に依存した経済が突然自国だけの力をメインに経済発展を望むのには無理がある。そこで、考え出されたのが欧州までを巻き込んだ巨大な経済圏構想、一帯一路政策であった。

共産党の統治体制堅持のための一帯一路政策

長々と説明したが、今回指摘したいのはただこの一点だ。この一帯一路政策には中国独自の国際ルールを作りたいというよりも、中国の中身、自国の安定的な統治を堅持するための側面がより重要となってくるのである。というのは、中国共産党一党による統治とは、将来にわたる経済成長という果実があるがゆえに一定の格差や各権利の制限が認められているのである。

ゆえに、中国政府もメディアや大学研究者が総出で一帯一路政策の成果をアピールすることによって成長があること示す。また、参加国に対して「運命共同体」であることを強調し共倒れしないように必死な取り込みを行っているのである。

実際に、筆者が中国に留学していた最近2年間においても、欧米の世界トップ校や中国国内から講師を招いて、学生に対してその政策の偉大な成果を幾度も喧伝していた。それらは、聞いている学生たちも明らかに政治宣伝に聞こえたほどであった(実際、宣伝話の内容にうんざりした留学生の一人が、批判点などないのかと尋ねると、講師は質問に答えるどころかその生徒が話を聞いていなかったと叱責した)。また、ある大学では一帯一路政策をテーマにした学位プログラムもあるほどである。

一帯一路政策を評価する時にまず注意しなければならないのは、中国の国内的背景を念頭におくこと。次に、一帯一路政策関連の中国国内外から発せられる成果には、多分に中国からのPRが織り交ぜられていることに配慮しなければならない。

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橋本 誠浩
橋本 誠浩(はしもと ともひろ) 東北大学法学部法学科卒業(法学学士)、浙江大学公共管理学院AFLSP2015(公共管理修士)修了。専門は、中国政治。特に現代都市社会について政治学の観点から分析を行っている。中国で3年過ごし、現在仙台を拠点に研究活動を継続。

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