東京五輪で想定されるテロとは?(後編)

      2019/02/15

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いよいよ来年開催に迫った東京五輪。4年に1回の世界のトップアスリートたちの競演に、国内外から注目が集まります。一方、心配なのが各国を悩ませているテロ。東京五輪ではどのようなテロが想定されるのでしょうか?安全保障の専門家に話を聞きました。(編集部)

前回の記事

東京五輪で想定されるテロとは?(前編)

東京五輪でのイスラム過激派のテロの可能性は?

テロと言えば、欧米や中東、アフリカ、アジアなどで毎日のように発生しているイスラム過激派が関連するテロ事件を想像するかもしれないが、筆者は東京五輪においてその種の脅威はかなり低いと考える。なぜなら、アルカイダやISなどの両組織にとって日本は決して優先度が高い攻撃対象ではなく、また十分な計画のもと日本でテロを実行することは容易ではない。島国であり、過激思想に染まるようなイスラム教徒も非常に少なく、また最先端の航空警備体制を敷ける日本においてテロを実行することは、このような過激組織にとっても大変難しく、労力を使うことである。

想定しうる原宿車両突っ込み事件の再来

人で賑わう日中の竹下通り(出典:原宿竹下通り商店会Facebook)

人で賑わう日中の竹下通り(出典:原宿竹下通り商店会Facebook)

では実際にはどのようなテロが起こりやすいのか。近年の国際テロ情勢から想定されるのは、日常生活で簡単に手に入る物を使ったテロである。
新年が明けた1月1日未明、原宿にある竹下通りを車が暴走し、8人が負傷する事件があった。車を運転していたのは職業不明の21歳の男で、「死刑制度に反対している、同制度は国民の総意、だからなるべく多くの人を狙った」などと供述した。そのほか、この男は竹下通り近くにある明治神宮にも突っ込む計画だったという。新年早々、世間を驚かせる事件だったが、来年の東京五輪を迎えるにあたっては、正にこの種のテロが現実的に懸念される。銃器の入手や自爆装置の製造は実際問題日本ではかなり困難であり、ナイフや鉈などよりも車両をテロで使用すれば、より多くの被害者を出せる可能性がある。
原宿の事件は、外形的にみると、ニースやベルリン、ストックホルムやバルセロナなど近年欧州各地で繰り返し発生する車両突っ込みテロと変わらない。日常的に手に入る車両という“武器”を使って、大衆が集まる場所に突っ込むのは、今日では流行のテロ手法になっている。

日常的に手に入るものでのテロ 欧米諸国のテロ対策参考に

おそらく、最も可能性が高いのは、外国からやってくるテロリストによるテロではなく、日本国内にいる何かしらの不満分子がインターネット上に流れる過激思想に共鳴したり刺激を受けたりし、本稿で指摘した車両やナイフ、鉈など日常生活で手に入る物を使って起こすテロだろう。こうなってくると、テロを防止することは極めて難しいことになる。もともと、テロという行為は実行する側に有利なものであるが、来年の東京五輪を迎えるにあたり、例えば、大衆が集まる場所を歩行者天国にし、その外には車両の進入を防止する強固なブロック塀などを置くことが1つのテロ対策となるだろう。また、日常生活で手に入る物を使ったテロは欧米諸国で多発していることから、そのような国々の最新のテロ対策は貴重なお手本となるだろう。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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