【連載】ロシアの実像を探る(11)ロシアとっての民主主義

   

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「非民主的」との批判に対するロシアの反論

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こうした批判に対してロシアも反論します。それを大括りで見ると:

① 民主主義にも国によって様々な形が有り、どれが最も優れているとかの判断は下せるものではないし、下すべきでもない。

② 西側と同じ思想や仕組みでロシアが物事を始めようとしたときに、西側は本気で助けようとはしなかった。ロシアの民主化を標榜しながら、西側は全く別のことを狙っているのではないか。

となります。

 

上記の①は煎じ詰めれば、「人のことにとやかく口出しするな」というのが本音ですが、そう感じるのはロシアだけではなく、現在通商関係を始めとして対米関係に苦慮している中国や、以前から米国に敵対しているイランやベネズエラなども同様です。

 

米国は自国が世界で最も民主的な国で、それ故に世界でも例外的な国なのだ、と公言して憚らず、その上で他国への説教に余念がない ― ロシアや中国にとって、このことは不愉快極まりない話なのです。

 

米国の民主主義の態様と欧州のそれとでは差異がある。ましてや日本との差も大きい。然し、これらの差異の中でどれがベストかの議論は殆ど存在しない。大統領制を採用している米国に比べて、そうではない英国や日本の民主主義が劣ったものだと唱える向きはまず居ない。それは、それぞれの内情と歴史的な経緯があるからだ。ならばなぜ、ロシアや中国の内情や歴史は考慮されないのか ――― 。

 

確かに米国の論は、時として対象となる他国への知識を欠き、その政策判断が的外れに終わることもあります。その典型例が湾岸戦争以来の中東でしょう。相手側の歴史と文化、国情を無視して強引な政策を進めた結果が、そこから抜け出すにも難儀する泥沼です。

 

ロシアについても一つ例を挙げるなら、2000年にプーチンが大統領に就任するや、直ぐさま手をつけた州知事任命制があります。ソ連崩壊前後に決められた州民の選挙による選抜方式から、中央政府による任命制に変更されました。

 

州民の意思が反映されにくくなると言うことで、米国などから「これは非民主的な動きだ」と批判されたものでしたが、当時のロシアの状況を見ると、民主的に選ばれたはずの知事が一国一城の主と化して中央の指示には従わず、やりたい放題の私利私欲に走っていたという実態がありました。国家としての体を失いかけていたのです。先ずこれを何とかせねば、ということでプーチンは手を打ったわけです(その後、選挙制へ戻されました)。

 

この連載の第9回にも書いたように、「官がやれば物事旨くは進まないが、民がやったらもっと酷い結果になる」といった実態と似通った話です。そして、この種の実態は米国の教科書では想定されてもいません。そうした米国や西側の無理解さに対して、まずは国の箍(たが)を引き締めることが必要であり、ロシアはその過程にあるのだからアレコレ余計な口を挾まないでもらいたい、という反論になるわけです。

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 民主化と市場経済は、ロシアに何をもたらしたのか

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上記の②は外交問題が絡みます。要は、1990年代の混乱の時期に西側はロシアの民主化と市場経済化を助けたと言うが、それがロシアに何をもたらしたのか、という問いです。

 

その問いに対する答えが、市場経済化とはロシアを弱肉強食のグローバリゼーションの中に放り込むだけで、そこで利益・権益を獲得するのは西側企業だけという図式ではなかったのか、という疑いです。

 

1990年代のロシア経済が、ハイパーインフレやGDPの大幅な落ち込みで大混乱に陥り、多くが酷い目に遭ったものであったことは、今でも人々の記憶に強く焼き付いています。西側はロシアを助けたと言うが、これがその結果なのか? その悪夢のような記憶は、怒りとして当時市場経済化を推進した国内の面々にも向けられ、親西側的な政治勢力を議会からほぼ一掃してしまいました。

 

さらに、西側の意図に対するこの疑いは、NATOの東進問題と重なって一層深められました。

 

1990年の東西両ドイツ再統一では、当時のソ連共産党書記長だったゴルバチョフが、NATO軍がドイツよりも東に展開しないことを西側が約束することを条件にこれを認めました。彼が同意したからこそ、ドイツの再統一は実現したのです。しかし、その後ポーランドを始めとする旧東欧諸国や、ソ連の一部だったバルト三国までがNATOへの加盟を果たし、約束は反故同然になりました。

 

ロシアは当然「西側に裏切られた」と受け止めます。現在ではプーチン政権にどちらかと言えば批判的な評論家としてのゴルバチョフですら、この西側の動きは「ロシアへの背信行為だ」として非難しています。これに対して米国は、それは書面に残されていない口頭約束に過ぎず、またNATOへの加盟は当の東欧・バルト諸国自身が望んだ結果だった、との反応を繰り返すのみです。

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