国民の不満の噴出か フランスにおける大規模デモを考える

      2018/12/17

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フランスでマクロン政権への風当たりが強まっている。ここ数週間、マクロン政権の燃料税引き上げに抗議するデモ活動が各地で発生している。今月8日にも、パリを中心に各地で大規模なデモが実施された。8日のデモには総勢12万人が参加し、逮捕者が1400人以上、負傷者が100人以上になったとも言われている。デモ参加者たちは黄色のベストを着用するなどして抗議したが、一部の参加者は暴徒化し、高級ブティック店で略奪行為をしたり、警察官と衝突したりするなどした。一連の大規模デモは観光業にも大きな被害をもたらし、ルーブル美術館やエッフェル塔など主要な観光名所は8日に終日閉鎖された。

 

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国民のマクロン政権への根深い不満

 

(Photo from Emmanuel Macron’s Facebook)

 

フランスで去年5月にマクロン大統領が誕生した際、国際メディアはフランス史上最年少39歳の若い指導者として大々的に報道した。マクロン大統領の華麗なる経歴などとして、サルコジ政権、オランド政権の負の遺産を洗い流す期待を背負ったマクロン大統領の誕生は、フランス国民にも新たな希望を与えたように見えた。しかし、就任から1年半、国民が見つけたのは希望ではなく、富裕層を優先するマクロン政権への幻滅、不満、苛立ちだった。

今回のデモには、右派や左派など政治的な壁を越えて市民が参加しており、抗議活動の原因は明らかに社会・経済的問題である。また、単に燃料税の引き上げの問題によってデモが大規模化したのではなく、今まで溜まっていた国民の不満が、同税の引き上げという問題によって一気に爆発したと言った方がいいだろう。よってそれだけ国民の不満は強く、燃料税引き上げを断念したからといって国民が満足するわけではない。今回の大規模デモは、これまでのマクロン政権の政策を評価した国民の声といってもいい。現在、支持率は23%にまで落ち込んでいる。

 

日本人のイメージと違うパリ

こういったフランスの現実に対して、日本人の中では驚く人も多いことだろう。しかし、現地を訪れると少なからず日本人の持つ華やかなイメージとは違う現実に気付く。筆者は今年9月にフランス・パリを久しぶりに訪れたが、例えば、シャンゼリゼにある高級ブティック店には、現地のパリ市民ではなく、中国人や日本人など、“憧れのパリ”で高級品を笑顔で買う外国人の姿が目立つ。パリ滞在時、筆者はパリ郊外にある長年の友人宅に宿泊したが、一般的なパリ市民にとっても凱旋門やシャンゼリゼ大通り一帯は非常に高いエリアで、車を駐車するだけでも非常に躊躇するという。同友人によると、パリの中間層はみんな地元の人々が集まる一般的な街で買い物をし、ユニクロや1ユーロショップ(日本でいう100均)などを利用するのが一般的だという。それだけ、パリ市民=シャンゼリゼ大通りではないという現実がある。

現地の友人宅に宿泊し、地元の人々と同じような行動をしていると、今回こうしてデモや暴動が起こったとしても、決して不思議ではない感覚を筆者は覚えた。フランス国民のマクロン政権への怒りや不満、幻滅の噴出を考えるにあたり、彼らの多くがこのような生活を送っているということは留意しなければならない。

 

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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