世界に広がる中国の一帯一路への反発と抵抗 日本に飛び火するリスクとは

      2018/12/03

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(Photo by Richard Fisher)

 

今月23日朝、パキスタン最大の都市カラチにある中国領事館を武装した集団が襲撃し、警察官2人を含む4人が犠牲となった。武装集団は領事館の中に入ろうとしたが、領事館を警備する警察官に止められ、その後銃撃戦となり、武装集団のメンバー3人も死亡した。事件後、西部バルチスタン州を拠点とし、パキスタンからの分離独立を掲げる過激派組織「バルチスタン解放軍(BLA)」が犯行声明を出した。声明の中でBLAは、中国はパキスタンの重要な資源を搾取し続けており、それを止めない限り今後とも攻撃を続けると警告した。

近年続くパキスタンでの中国権益への攻撃

(Photo by en:user:Paranda)

 

近年、パキスタン国内では経済的な影響力を高める中国に対して反発や抵抗の声が高まっている。今回の事件で犯行声明を出したBLAは、中国の一帯一路政策に強く反発し、2017年5月には中国が43年間の租借権を得た南部グワダル港近郊で道路作業員10人を殺害し、2018年8月には中国人従業員が乗るバスを襲撃し、複数の負傷者を出した。

また、2017年5月にはバルチスタン州クエッタで中国人2人が武装勢力に拉致された後に殺害される事件が発生し、過激派組織イスラム国(IS)が同年6月に犯行を認める声明を出した(具体的な詳細は述べられていない)。

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世界各地で高まる「“反”一帯一路」の声

そして、中国が進める一帯一路への抵抗や反発を示しているのは、何もパキスタンだけではない。既にその声は世界各地から少なからず聞こえる。

例えば、2018年9月、アフリカ南部の国ザンビアの首都ルサカで大規模な反中デモが発生した。近年、ザンビアの中国に対する公的債務は膨れ上がる一方で、電力や放送など重要なインフラを営む国営企業の管理権が中国へ明け渡されるのではないかとの懸念が広がっている。また、スリランカでも同月、同国南部にあるハンバントタ港の運用権が中国に99年貸与されたことに反発するデモが首都コロンボなどで発生し、地元の中国への不信感が高まっている。同様の傾向は、インド洋に浮かぶモルディブ、トンガやパラオ、ナウルなど南太平洋諸国などからも少なからず見られるようになっている。

日系企業も新たなリスクを抱える

当然のことながら、日本の対外援助というものは中国の一帯一路とは理念や目標、質も違うものである。しかし、一帯一路への抵抗や反発が強まる傾向は、2つの側面から日系企業にも新たなリスクをもたらす。

1つは、中国への抵抗や反発から連鎖的に生じる“反帝国主義的”な運動である。こういった外部の侵略者から地元を守るといった運動が強まると、中国に限らず、パキスタンに進出する欧米や日本などの先進国にも影響を与える可能性は否定できない。一部の現地住民や過激派組織からみると、中国がやっていることも欧米・日本がやっていることも、“同じ部外者の経済活動”と映ることもあるだろう。

もう1つは、中国人と日本人の識別である。一般的に、日本人と中国人同士は雰囲気や言語でお互いを区別できることが多いが、各国の現地住民や過激派組織がそれを明確にできるとの保証はどこにもない。現地住民や過激派組織からすると、同じアジア系くらいしか判別できず、邦人や日系企業を反一帯一路の思惑で標的にしてしまう可能性も十分にあるだろう。

中国による一帯一路政策が十分な透明性を持ち、支援国から感謝されるものになるならば、それに越したことはない。しかし、現実の国際社会で起こっているそれは多くの問題点を抱えており、危機管理的な視点からどういったリスクが生じる恐れがあるかを事前に研究・分析しておくことは重要だと考える。

 

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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