【連載】ロシアの実像を探る (10)ロシア経済とエネルギー資源 [茅野 渉]

   

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エネルギー大国・ロシア、その実情とは

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ロシアのエネルギー資源産業がGDPでどれだけの割合を占めているのかは、明確な統計が得られないためにはっきりしません。

過去にはロシアの統計で1割強とかの数値も出たようですが、「そんなに少ない筈はない」という批判が多々出ました。

生産と輸出という面から見ると2017年では以下のようになります:

- 生産量:原油/世界第1位、天然ガス/世界第2位、石炭/世界第6位

- 輸出量:原油/世界第1位、天然ガス/世界第1位、石炭/世界第3位

2018年には米国の原油生産量が急増し、世界第1位の座は奪われる見込みですが、それでもロシアが一大資源生産・輸出国であることは揺るぎません。

石炭は世界生産の半分を中国が占める状況ですから、ロシアの生産量はその中国の10分の1程度でしかありませんが、同時に中国は世界最大の石炭輸入国でもあるので、輸出者としてのロシアの存在が浮上します。

ロシアの原油・天然ガス・石炭それぞれの輸出比率(生産量に占める輸出の割合)は、原油で約半分(残りの半分が国内で精製され、その製品の多くも輸出へ)、石炭も半分以上、天然ガスで1/3前後となります。

そして、ロシアの全輸出額に占めるこれらの輸出の割合も半分を超えています。

今後かなりの期間、この傾向に大きな変動は予測されていません。

 

多くの論者は、この中で石油・ガスが全輸出額の半分超を担っている点や、この2分野からの徴税の、国家歳入への寄与度に注目します。ロシアの国家財政で、石油・ガス分野からの歳入の割合は、その年の原油の国際価格に左右されるものの概ね4~6割といったところでしょう。

このような点から中東産油国程ではないにせよ、エネルギー資源輸出に大きく寄り掛かっているという図では同じ、と結論付けられます。

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ロシア経済=エネルギー資源という「現実」と「思い込み」

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そして、エネルギー資源輸出依存=工業製品輸出が弱い、ということで、西側の経済史観から見れば、それがそのまま産業文化の後進性という判断に結び付きます。

また、プーチン政権下で2009年、2015~2016年と3年間成長がマイナスに陥りましたが、その何れもが原油の国際価格急落という外的要因によるもので、輸出依存が外からの衝撃に対して脆弱な経済体を作り上げている、とも分析されます。

 

しかし、こうした批判が皆尤もだとしても、単純に「資源輸出を減らせばよい」という結論にはなりません。

 

結局、経済発展のためには、資源輸出はそれとして、どう並行してそれ以外の産業振興を図っていくべきか、という課題が必要になります。

エネルギー資源生産・輸出が「不健全な安心感」を生んでいると書きましたが、その種のメンタルな部分をどう除去していくかです。

これは数値目標などが立てられない世界ですから、なかなか難しい話です。

 

また、「ロシアはエネルギー資源次第だ」という外国人にもロシア人にも見られる思い込みが、原油価格の動向に必要以上に反応してしまい、為替や株価を変動させることで実体経済そのものに打撃を与えてきていることも否めません。

そうなってくるとロシア経済の問題とは、エネルギー資源の生産・輸出依存の実態ではなく、「ロシア経済はエネルギー資源の生産・輸出に依存している」と人々がそう思っていることだ、という結論にもなるでしょう。

これは「不健全な安心感」と表裏一体とも言えます。

 

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