【連載】ロシアの実像を探る (10)ロシア経済とエネルギー資源 [茅野 渉]

   

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ロシア経済とエネルギー資源

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前回はロシア経済が抱えている諸問題について触れました。

今回はその中で、エネルギー資源の生産や輸出の持つ意味合いについて見てみましょう。

ロシア経済がエネルギー資源輸出に過度に依存している、という記述を何度か目にされた方も居られるかと思います。そうした記述の多くは、ロシアとその経済を否定的に捉える文脈の中で出てきます。

その趣旨をやや乱暴にでもまとめてみると:

- プ-チン政権の傍若無人な対外強硬策は目に余るものがある。

- それは国内経済が旨く行っていないことから国民の目をそらすために、益々酷くなる。

- 経済が旨く行っていないのは必要な構造改革を怠り、エネルギー資源の輸出でしか成り立って行かないような形をいまだに変えられないことが原因。

- 構造改革を怠った背景には、政権と結び付き、既得権益擁護の為に市場経済化を歓迎しない勢力の存在がある。

といったところでしょう。

 

これは政治・外交面でロシアと対立する西側の見方ですから、批判的になるのも当然とも言えます。日本のメディアの論調も概ねこれに沿ったものが多いようです。前回提示したこれまでのロシア経済の成長率推移を見れば、こうした見方も的外れとは言えません。

2010年以降は世界全体の平均値を下回っているのですから、成長が4~5%は当たり前といった新興諸国のグループの中で比較の対象になれば、冴えない経済という結論に至ります。

ここで注意しなければならないのは、批判する側の成長率比較の対象が先進国ではないということです。先進国で4%台の成長があり得るのは米国くらいのもので、西欧も日本もロシアに比べてそれほど褒められたものでもありません。

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投資の少ないロシア経済に漂う「不健全な安心感」

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では、他の新興諸国にあってロシアに欠けているものは何か、となります。

これを求めてGDP統計を見れば、答えが投資の占める割合とその伸びであることが分かります。

多くの新興諸国は未だ所得水準がそれほど高くないために、内需の拡大が経済を支えるにはまだ心もとなく、それを旺盛な設備投資が担います。一時の中国ではこれがGDPの半分近くを占めました。それは突出し過ぎた例としても、大体30%以上の割合が期待されます。

しかし、ロシアではこれが20%程度で、先進国並みに止まっているのです。

 

新興国は設備投資の原資を然程ふんだんに持っている訳ではありませんから、そこで外資の流入に期待を懸けます。

そしてその投資からの生産品を活発に輸出に向けることが、経済発展の駆動力になります。

これが製造業の分野で起これば、技術や経営・生産での経験値の伝搬とそれに触発された地場産業の勃興も期待されます。

 

こうしたサイクルが欠落しているところから、ロシアの低成長の理由が説明されます。

その欠落の諸理由については、民間資本・企業の未成熟さなどに前回触れましたが、総じて投資条件がなかなか改善しないことに求められるでしょう。

そして、その改善を遅らせているのは、そうしなくても国の経済全体はエネルギー資源生産・輸出で維持されてしまう、という「不健全な安心感」があるから、ということにもなります。

実は、1993年以来これまで、ロシアは一度も経常収支が赤字になったことがありません。

これは他の新興国・途上国と大きく異なる点で、エネルギー資源輸出国だからこそ可能なのです。

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