欧米関係の悪化と今後の行方

   

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第一次世界大戦終結100年記念式典にて、左からメルケル首相とマクロン大統領

フランス・パリの凱旋門で11日、第一次世界大戦の終結100年を記念する式典が開催された。式典にはフランスのマクロン大統領ほか、米国のトランプ大統領やロシアのプーチン大統領、ドイツのメルケル首相など約70か国の国や機関の指導者が参加した。式典での演説で、マクロン大統領はトランプ大統領の米国第一主義を否定し、地球規模の問題を国際社会が協力して解決していくべきだと国際協調主義を強く訴えた。

しかし、その前後のイベントを含め、トランプ大統領やプーチン大統領からそれに賛同するような言動は全く見られなかった。マクロン大統領の国際協調を強く訴える姿とは反対に、そこには自国優先を強調する指導者の姿があった。地球温暖化やテロなど、世界には各国が協力して対応するべき問題が山積みしているが、世界はさらに分断へと進んでしまうのだろうか。

欧米の分断と亀裂の先鋭化

式典にあたり会談を行ったトランプ大統領(左)とマクロン大統領(右)

筆者は、近年の米国と欧州主要国、特にフランスとドイツとの関係を見ていて非常に懸念を覚える。2003年のイラク戦争開戦時、当時のブッシュ政権が国連安保決議なしにイラクへの軍事行動に踏み切ったということで、米国とフランス・ドイツとの関係は非常に冷え込んだ。しかし、その当時の米国は単独行動主義と非難されたが、少なくとも「世界の中心は米国であり、米国は世界の警察官だ」という“世界をリードする国”という自負はあった。しかし、現在の米国とフランス・ドイツとの関係悪化は2003年のものとは明らかに違う。

トランプ大統領が掲げる米国第一主義は、その名の通り国益第一主義で、そのビジネス上の取引的なディール外交にはオバマ外交時の理念などは一切感じられない。
今まで、トランプ大統領とマクロン大統領、メルケル首相が会談したのは何回も見たことあるが、そこにあるのは全く意識・目標の違う白人同士の姿だった。オバマ前大統領と何回も会談し、長くドイツの指導者を務めているメルケル氏が、トランプ氏と初めて会った時、「これが本当に米国の指導者なのか」と疑ったとしても想像に難くない。そしてそのメルケル首相は2021年に首相を退任することを表明している。
マクロン大統領とメルケル首相がトランプ大統領と会談した際、彼らは多国間主義という価値の重要性をトランプ大統領に訴えると同時に、そこには米国の先行きを非常に懸念する二人の顔があった。

今度の米国とフランス・ドイツの関係を大きく左右する出来事は、2020年の米国大統領選挙だろう。その際に、アメリカファーストがさらに4年続くのか、もしくは多国間主義を重視する政権が生まれるのか、それが大きな分岐点となる。しかし、米中間選挙も終わった今日、米国とフランス・ドイツとの冷めきった関係は少なくとも2年は続くことだろう。トランプ大統領がフランス・ドイツに歩み寄って多国間主義重視へ転換することはまず考えられない。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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