東南アジアテロ情勢のこれまでとこれから

   

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2014年6月のイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の台頭は、グローバル・ジハードテロの領域において、大きな転機となった。2009年7月のジェマー・イスラミヤ(JI)によるジャカルタ高級ホテル連続爆破テロ事件(JWマリオットとルッツカールトンが標的となった)以降、ISの台頭までの5年の間、東南アジア地域では大規模なテロ事件は見られず、他の地域と比べても同地域のテロ情勢は落ち着いていたといえる。9.11以降、JIはインドネシア国内で欧米権益を中心に度々テロ事件を実行してきたが、幹部を含む大量のメンバーの殺害や拘束によって、組織としては大規模なダメージを受け弱体化していった。しかし、ISの台頭は東南アジアのテロ情勢にも影響を及ぼすようになり、インドネシアやマレーシアでのIS関連のテロ事件、フィリピン南部マラウィにおけるIS系組織の占拠などは記憶に新しい。今週の論考では、領域支配のIS後の国際テロ情勢の行方と関連して、今後の東南アジアのテロ情勢について考えてみたい。

遠隔操作型テロを主導してきた容疑者たちの殺害

ISの台頭以降、インドネシアやマレーシアではシリアやイラクを拠点とするISに参戦し、そこからネットやSNSを通じて母国にいる仲間たちに命令・指示を出し、テロ攻撃を実行させるという「遠隔操作型テロ」が見られるようになった。2016年1月のジャカルタ中心部テロ事件、2016年6月のクアラルンプール近郊プチョン爆発事件、2016年8月シンガポール・マリーナベイサンズテロ未遂事件などがそれにあたるが、それらの事件の首謀者であるBahrun Naim容疑者、Muhammad Wanndy容疑者、Bahrumsyah Mennor Usman容疑者などは、近年米軍による空爆や自爆テロによりシリアやイラクで死亡したことが確認された。

ミンダナオ島マラウィ占拠の終了

フィリピン空軍による爆撃(Photo by Mark Jhomel)

フィリピン空軍による爆撃(Photo by Mark Jhomel)

また、フィリピンでは2017年5月から10月にかけて、ISに忠誠を誓うアブサヤフ(ASG)やマウテ・グループ(Maute Group)がマラウィを占拠し、フィリピン軍との戦闘が激化した。5ヶ月間に及ぶ戦闘の結果、多くの民間人が犠牲となったが、昨年10月にイスニロン・ハピロン容疑者やマウテ兄弟ら指導者たちが次々に殺害されたことで、占拠グループは大きなダメージを受けたものとみられる。同月23日には、フィリピンのロレンザーナ国防相が記者団に対しIS支持勢力掃討作戦の終了を宣言し、作戦の完了を明らかにした。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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