新しい「アーミテージ・ナイレポート」が示唆する日米関係の行方

      2018/10/23

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日米同盟の行方を探るバイブル「アーミテージ・ナイレポート」

「アーミテージ・ナイレポート」発表会見の様子(米CSIS公式YouTubeチャンネルより)

今月初め、日米同盟の今後を左右する政策提言書、通称「アーミテージ・ナイレポート」の第4弾が発表された。

「アーミテージ・ナイレポート」とは、米国で知日派として知られている、ジョージ・W・ブッシュ政権(2001~)で国務副長官を務めたリチャード・アーミテージ氏と、ハーバード大学ケネディスクールで教鞭をとり、米民主党政権でしばしば政策提言に関わったジョゼフ・ナイ氏の2氏が2000年から超党派で作成している政策提言書である。

筆者は前回の第3段を和訳し、独自に分析を行ったことがあるが、今となって言えることであるが、第3弾は正にこの6年間の安倍政権の安全保障政策にとっての聖典書のようだったと言える。第3弾では、「日本は一流国家であるかどうかの転換期を迎えている」、「集団的自衛権の制約が、日米同盟が前進する上での障害となっている」などの厳しい指摘がなされ、集団的自衛権の行使、防衛技術やサイバーセキュリティ、エネルギー領域での関係強化など多くのことが提言された。そして安倍政権下の安全保障政策では、集団的自衛権の限定的行使、防衛装備移転3原則、特定秘密保護法などが実現し、一部の人から、アーミテージ・ナイレポートは安倍政権下での日米同盟の行方を探る上でのバイブルと見られるようになった。

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トランプ政権への懸念と米国の日本への期待

メディアに敵対心をむき出しにするトランプ大統領

では、今月上旬に公開された第4弾では、如何なることが提言されたのだろうか。簡単に安全保障面を要約すると、まず、両氏は報告書の中で、トランプ政権下での米国第一主義、ディール外交、独裁者との無条件対話などが米国の理念や価値観を低下させ、同盟国との間で大きなギャップが生じるようになったと懸念を示した。そして、中国や北朝鮮による軍事的脅威が高まる中、日米同盟は未だかつてないほど重要なものだと強調し、日米による共同統合任務部隊の創設、基地の共同運用拡大、GDP1%の防衛支出、自衛隊における統合司令部などを提言した。

これら提言では、トランプ政権への外交上の深い懸念が示され、対日関係では、両氏は日本のさらなる軍事的関与と日米の軍事的一体化を求めているということだ。第3弾は2012年8月に発表されたが、そこから6年以上の月日が流れている。周知のように、その間において中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイルなど、日本を取り巻く安全保障情勢は劇的に変化している。そして、中国の影響力が国際社会で高まるにつれ、米中間の競争、対立というものも先鋭化している。その軍事的最前線が極東アジア地域であり、両氏は日本の役割拡大を強く求めていることが感じられる。要は第3弾で指摘されていることだけでは足りず、さらなる要求を突き付けているのが第4弾だ。ちなみに両者はレポートの中で、「最終的に、日本に駐留する米軍は全て日本の基地から活動できるようにするべきで、非常事態が生じた際には民間の港や空港へのアクセスも必要だろう」と言及している。

これらの提言に対して、安倍政権は如何なる安全保障政策を講じていくのだろうか。それは今後の日米関係、国政の行方などにも左右されることだろうが、安倍政権下の安全保障政策を探って行く上において、第4弾が第3弾ほどではないにしても一定の影響力を持つことは間違いないだろう。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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