トランプ政権に翻弄される世界-世界はさらに無秩序化するのか

   

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共和党への投票を呼び掛けるトランプ大統領

来月、米国で中間選挙が実施される。2016年の米大統領選挙はドナルド・トランプ氏当選という結果で世界に衝撃を与えた。もうすぐそれから2年を迎えようとする中、トランプ政権は世界の人々にどんな印象を与えてきたのだろうか。今週の論考では、トランプ政権について筆者の独自の見解を示したいと思う。

トランプ政権に対する評価

トランプ政権について、当然のことながら人によって評価は違う。北朝鮮を対話路線へ引きずり出したと評価する人もいる一方、TPPやパリ協定などから一方的に脱退したと多国間主義・国際主義を重視する人は大きな懸念を抱いたことだろう。しかし、筆者はその是非の議論ではなく、実際、トランプ政権が世界の人々にどのような影響を与えているのかに着眼してきた。

北をめぐる緊張の高まり、イランをめぐる欧州諸国との孤立

2018年にシンガポールで行われた米朝首脳会談の様子

一言で簡単に言うと、2017年以降、世界はトランプ・アメリカに翻弄され続けてきた。例えば、北朝鮮情勢において、オバマ前政権は“戦略的忍耐”という戦略だったことから、北東アジアの軍事的緊張が高まることはなかった。しかし、周知のようにトランプ政権はオバマ政権と全く異なる姿勢を貫き始めたことから、2017年以降同地域の安保情勢は一気に緊迫化した。安倍・トランプ関係は安全保障面では上手くいっていると言えるが、この当時韓国に進出する日系企業の間では、いつ攻撃が始まるか、駐在員の安全を如何に守るかといった心配が広がり、経済界は翻弄されることとなった。
また、トランプ政権は2015年のイラン核合意から一方的に離脱した。それによって同じ自由・民主主義である英国やフランス、ドイツなど欧州主要国と大きな隔たりが生じるようになった。トランプ政権はイランへの敵意を剥き出しにしているが、キリスト教福音派がトランプ政権の大きな支持母体になっていることを考えると、筆者にはトランプ政権はイスラエルの代弁者になっているようにも映る。現在でも欧州はイラン核合意の有効性を否定せず、今後についてイランや中国、ロシアと交渉しており、米国の孤立というものが色濃く見える。

国際秩序における最大の変数となったアメリカ

トランプ政権の誕生以前、国際秩序の最大の変数は経済的な台頭を顕著に示す中国だった。しかし、2017年以降、トランプ政権は各国を翻弄する最大の変数となっているように映る。中国の海洋進出、一帯一路について懸念の声が増える一方、米国第一主義の貫徹、多国間主義の否定といったトランプ政権の戦略に、世界はまだ慣れておらず、困惑しているように感じる。冷戦以降、自由民主主義、資本主義とアメリカ流のグローバル化が進んできた世界において、その牽引役がリーダーシップを放棄することは何を意味するのだろうか。世界は無秩序化するのか、もしくは世界をリードする米国への回帰を目指す大統領が誕生するのか、その行方は分からない。しかし、現在我々は今までに経験したことのない国際秩序の中に突入していることは確かだ。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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