欧州におけるテロの脅威(2)-フランスを訪れて考える

   

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ルーヴル美術館

次に訪問したのがフランスのパリだ。パリといえば思い出す方も多いと思われるが、2015年11月に劇場やレストランなどが標的となる同時多発テロ事件が発生した。この事件はフランス史上最悪のテロ事件となったが、未だにISなどの脅威が止む気配はない。

筆者は9月20日から4日間の日程でパリに滞在し、凱旋門やエッフェル塔、ルーブル美術館やベルサイユ宮殿など、以前に数回は訪れたことのある場所に再び足を運んだ。観光という目的もあったが、国際テロ情勢のウォッチャーとして、パリ同時多発テロから一体パリの雰囲気がどのように変わったのかを探る目的もあった。

欧州におけるテロの脅威(1)-イタリアとフランスを訪れて考える

日常を取り戻したが、テロの恐怖が残るパリ

パリ シャンゼリゼ通り

(Photo by David Monniaux )

結論から先となるが、一言でいうと、パリはテロ事件後日常を取り戻しているが、パリ同時多発テロの恐怖というものは社会に色濃く残っているように筆者は感じた。ベルサイユ宮殿やエッフェル塔など定番の観光名所では、ローマと同じく観光客の楽しそうな声があちらこちらで聞こえる一方、その横では銃武装した兵士たちが堂々と立ち、辺りを巡回していた。何か怪しい行動をしている人物がいれば断固とした対応を取ろうとする兵士の姿がそこにあった。

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フランス市民の心に刻まれたテロ

しかし、アジアなどからやってきた観光客と違い、現地のパリ市民はそれに何ら違和感を覚えているようには見えなかった。パリで共に行動をしたフランス人の友人に聞くと、「同時多発テロ以降もパリでは断続的にテロ事件が起こっている。兵士たちがテロの標的となりやすい場所で厳重に警備をするのは当然のこと、むしろ市民はそれで安心している」と答えた。それを聞いて、筆者は「パリは日常の姿を取り戻しているものの、あのテロ事件は市民の心の中に深く刻まれている」と感じた。

テロへの厳重警戒態勢は今後も続く

イタリアと違い、フランスはIS関連のテロ事件に繰り返し襲われている。それもあって、フランスがイタリア以上にテロに警戒するのは十分に理解できる。シリアとイラクでISが崩壊したとしても、それによるテロの脅威は続いている。ISはインターネットやSNSを通して支持者たちに欧米でのテロを呼び掛けるメッセージを繰り返し発信しており、その脅威が止む気配は現在のところ全く見えない。この脅威が収まらない限り、エッフェル塔や凱旋門など主要な観光名所での兵士の巡回や警備は今後とも長く続くことだろう。

我々日本人としては、観光旅行でパリを訪れたとしても、フランスがテロの直接的な脅威に直面していることを理解し、テロが起きそうな場所や時期を把握することが何よりも重要だと筆者は考える。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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