量子コンピュータから半導体まで。世界トップをめざすアリババの巨額投資

   

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アリババが研究組織DAMO ACADEMYを設立、圧倒的な研究資金と研究成果

「DAMO ACADEMY」へのビジョンを語るジャック・マー。出典:www.alibabacloud.com)

「DAMO ACADEMY」へのビジョンを語るジャック・マー。出典:www.alibabacloud.com)

前回の筆者の記事では、中国政府が国営の量子コンピュータ関連の研究所の設立に1兆円ほどの投資を行ったことを紹介した。本記事では政府でなく中国のIT企業アリババが行ったIT関連分野への全方位的な投資に着目したい。

アリババは、2017年10月に量子コンピュータを含む次世代技術開発のための研究組織を設立し、3年間で1.7兆円の投資を発表した。日本政府の平成29年度の科学技術予算のすべての分野を含めた年間総額が約3.5兆円前後であるので、その半分の額が一つの分野に投入されているから驚きだ。

金額以外にも特筆すべき点がある。設立から間もないこの組織は、Googleが、従来のコンピュータの能力ではなしえなかった計算を世界で初めて可能にするとして現在開発中のコンピュータチップ「Bristlecone」の性能の過大評価を指摘し、米国内の研究機関でにわかに注目を集めている。

アリババの巨額投資の背景にあるNASA計画

潘建偉氏。Nature誌で科学技術分野で最も重要な10名に選ばれ、「量子の父」とも評された(出典:www.alibabacloud.com)

潘建偉氏。Nature誌で科学技術分野で最も重要な10名に選ばれ、「量子の父」とも評された(出典:www.alibabacloud.com)

このアリババの大規模なIT分野への投資と急速な発展の背景の一つに彼らが2017年3月に発表したNASA計画と呼ばれる未来20年に向けた新技術戦略が存在する。アリババグループ会長のジャック・マーは研究開発組織【アリババ達摩院(Alibaba DAMO Academy)】を発表し「世界に1億人の雇用を創出、世界の20億人にサービスを提供し1千万社の中小企業への支援を可能にするようなプラットフォームの実現に向け、一貫した研究開発主義を通し社会問題の解決に努める」というビジョンを表明した。

彼らが発表した研究分野は、量子コンピュータ以外にも、フィンテック、機械学習、AIなどのソフトウェアから半導体関係といったハードウェア、そしてその双方にまたがるIoTまで、複数の技術分野を研究領域としてカバーしている。

また当プロジェクトの中で特に注目すべきは集まった教授陣である。米国からはUCバークレー校、プリンストン大学、コロンビア大学、ハーバード大学、MITからコンピュータ・データサイエンスの教授を集め、国内からは量子情報で中国を代表するPan Jian-Wei(潘建偉) 氏が参画し量子コンピュータ開発を主導している。彼は英総合学術雑誌Natureで、社会学、人文学、地質学、医学等々を含んだ横断分野で2017年の重要人物の10人に選出されており、量子情報の分野で世界的に注目を集めている人物だ。

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中村 悠馬
アメリカ、テネシー州のOakRidge国立研究所にてResearch Associateとして勤務(2018年5月時点)。ダブルディグリープログラムにて2017年に中国清華大学理学修士(化学)、2018年に東北大学理学修士(物理)を取得。現在、スーパーコンピュータを用いた材料設計シミュレーションおよび量子コンピュータの応用への研究を行っている。

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