人工知能(AI)に次ぐ技術トレンド、量子コンピュータ 〜加速する各国の巨額投資と台頭する中国〜

   

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既存のコンピュータと全く動作原理が異なる量子コンピュータは、数年前まで一部の科学雑誌で紹介されるのみだったのが、2017年後半あたりから人工知能(AI)に次ぐトレンドになりつつある。なぜここまでの注目を集めたのか?それは、この技術がもたらすセキュリティ危機というネガティヴな側面と、技術革新への期待というポジティブな側面の2つの観点から語ることができる。

従来のコンピュータ(中)と量子コンピュータ(下)の原理の違い。(写真出典:Jbw2)

既存のセキュリティシステム崩壊の危機

オンライン上での金融取引や個人情報管理に使われる現代のセキュリティ技術は、量子コンピュータを使えば簡単に突破できることが1994年の時点で証明されてしまっている。だが当時は、量子コンピュータが近い未来に実用化されるとは考えられておらず、世界的に標準化されたセキュリティシステムを再構築しようという動きは見られなかった。しかし近年GoogleやIBMなどが実際に量子コンピュータのハードウェアを開発して、一般ユーザーにも無料公開を始めた。そのため上記のようなセキュリティ危機が現実的な問題となってきた。

アメリカの国家安全保障局は、セキュリティに関して異例の警戒情報を発表し、量子コンピュータが実用化されると現行の暗号化技術が破られると注意を喚起した。この暗号技術の問題は軍事面でも非常に重大であり、世界中の国で巨額の予算を量子コンピュータ研究に投下する流れが生まれた。

米IBM Research バイス・プレジデント、ボブ・スーター氏の見解によれば、量子コンピュータ開発は現在試運転の段階ではあるが、2020年以降では実用段階に突入し、セキュリティの脅威になりうると指摘している。つまり、量子コンピュータの実用化は、多くの企業や政府機関にとって事業停止に直結しうるリスクであり、今すぐにでも対応策を考えなければならない事態である。Yahooでの個人情報流出や、コインチェックでの通貨流出などの、不正アクセスによるセキュリティ事故の報道はまだ記憶に新しいが、こういった事態が現代のセキュリティ技術のままではいくらでも起こることになる。

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中村 悠馬
アメリカ、テネシー州のOakRidge国立研究所にてResearch Associateとして勤務(2018年5月時点)。ダブルディグリープログラムにて2017年に中国清華大学理学修士(化学)、2018年に東北大学理学修士(物理)を取得。現在、スーパーコンピュータを用いた材料設計シミュレーションおよび量子コンピュータの応用への研究を行っている。

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