なぜシリアに攻撃して、北朝鮮に攻撃しないのか?~安全保障の視点から考える

      2018/04/30

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トランプ政権になって2回目のシリア攻撃

アサド政権による化学兵器使用を巡って大国間で緊張が高まる中、米国と英国、フランスの3か国は14日、シリア国内にある化学兵器関連施設への攻撃に踏み切った。トランプ政権は先週国家安全保障会議を開催した際、「最終的な決断は下さず、英仏との協議を続ける」との声明を発表していたことから、筆者も14日にミサイル攻撃が実施されるとは予想していなかった。今回の空爆は全て標的に命中したと国防総省は発表しているが、化学兵器関連施設のみへの攻撃であり、アサド政権の行動や戦略を変えさせるものにはなっていない。要は非常に限定的な空爆で、アサド政権の弱体化や崩壊を意図したものではない。

既に多くのメディアや識者がそれぞれの論調を述べているが、今回の空爆によって筆者は1つの問いに辿り着いた。それは、「トランプ政権はなぜシリアに攻撃して、北朝鮮に攻撃しないのか?」である。周知のとおり、今後南北首脳会談に続いて米朝首脳会談が予定されており、米朝の政治的緊張は緩和される方向に傾いているが、去年における両国間の緊張は周辺諸国に対して軍事的衝突の可能性をちらつかせた。では、その違いはどこにあるのだろうか。本稿では、それについて以下2つの見解を示してみたい。

核兵器の保有と使用の可能性

安全保障において、核と抑止の議論は長年のものであるが、まず、「核兵器の保有と使用の可能性」がある。核兵器を開発・保有する北朝鮮は、米国との緊張が高まる中、核弾頭を搭載でき米国まで届くICBM(大陸間弾道ミサイル)の開発に着手しているとされる一方、シリアのアサド政権は核兵器を保有しておらず、米国本土への攻撃意思も持っていない。

北朝鮮は体制の保証と米国との対等な交渉を目的に核を保有しているが、米国としても核を保有する北朝鮮に対してはむやみに軍事的手段を取れない現実がある。また今回のシリア空爆のきっかけはアサド政権による化学兵器の使用であるが、公になっていないことも多いものの、北朝鮮当局による国民への人権侵害や弾圧なども長年続いていると考えられる。それにも関わらず、米国が北朝鮮に対して人道主義からの空爆を実施できない背景には、北朝鮮による核が抑止力として一定程度効いていることが考えられる。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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