カズオ・イシグロと上海のシャーロック・ホームズ

   

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カズオ・イシグロの上海物語

(関連書籍の書影)

昨年、ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏。日本人を両親に、長崎で生まれ、英国で育った氏の作品には、日本を舞台とした作品『遠い山なみの光』『浮世の画家』があり、話題を呼んだ。

今回取り上げたいのは、中国を舞台とした同氏の作品『わたしたちが孤児だったころ』である。2000年に発表されたこの作品は、「魔都」とも称された20世紀前半の上海を舞台としている。そして、20世紀初頭の中国の作家たちもまた、イシグロと同じ主題で、上海の混迷を書いていたことを紹介したい。

『わたしたちが孤児だったころ』の概要

主人公のクリストファー・バンクスは、上海の租界で何不自由なく暮らしていたが、10歳の時に両親が相次いで失踪し、孤児となる。アヘン貿易に手を染めていた父と、アヘン反対運動に携わっていた母との確執、日本人の少年アキラとの友情に触れながら――イギリスの伯母のもとで育ったバンクスは、いつか両親を救出したいという願いを抱き、私立探偵として再び上海の地に舞い戻る。時は1937年、日中戦争の火蓋が切られた年であった。両親を救出できるのか、親友アキラとの再会はかなうのか――

作中には、アヘン、誘拐、戦争、軍閥、賭博といった、1930年代の中国おきまりの図柄が次々に現れる。バンクスは自分の推理に絶対の自信を抱いているが、中国の混迷した現実の前になすすべもないまま、銃弾が飛び交う市街地をさまようこととなる。

「あとがき」によれば、作者のイシグロはインタビューで「拡大鏡片手に事件解決に挑むこのタイプの探偵を、混沌とした悪が渦巻く二十世紀のある時期にふたたび放り込んでみたかった」と答えているという。

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春申游客
地方大学の大学院で中国近現代文学を学んでいる。過去に上海に語学留学の経験あり。地方の小説を読んで誌上旅行するのが趣味。

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