南太平洋地域を巡る中国の「台湾潰し」と危機感を強める仏米豪

   

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前回の記事では、経済を武器に南太平洋地域での影響力を高める中国について紹介したが、今回はその政治的な側面に焦点を当てる。

近年、南太平洋各国と経済的結び付きを強めている中国ではあるが、その影響は外交・安全保障分野にまで及び始めている。特に、南太平洋各国の多くと国交を持つ台湾では2016年5月に民進党の蔡英文政権が発足し、中国に対して焦りの色をにじませている。また、南太平洋地域に自治領を持つフランス、オーストラリアやニュージーランドなどは安全保障的な側面から中国へ警戒を強めている。

中国による「台湾潰し」と台湾の国際的地位の低下

マーシャル諸島を訪れた蔡英文総統

現在、台湾と国交を持つ国は世界に20か国ほどあるが、その数は年々減少傾向にある。去年には台湾と100年に渡って国交を保ってきた中米パナマが断交し、北京と新たに国交を樹立した。そしてそれは、南太平洋各国の多くと国交を持つ台湾にさらなる外交的な脅威を与えている。

今日、南太平洋で中国と国交を持つのは8か国(フィジー、サモア、パプアニューギニア、バヌアツ、ミクロネシア連邦、クック諸島、トンガ、ニウエ)、台湾と国交を持つ国は6か国(マーシャル諸島、ツバル、ソロモン諸島、パラオ、ナウル、キリバス)であるが、前回紹介したように、中国はパラオなど台湾と国交を持つ国への経済的な結び付きを強化している。これは一種の「台湾潰し」と表現できるかも知れないが、それに危機感を抱く蔡英文氏は去年10月、マーシャル諸島とツバル、ソロモン諸島を次々と歴訪した。

また、近年、中国は南太平洋諸国の地域機関である「太平洋諸島フォーラム(本部 フィジーの首都スバ)」へ関与を強めている。太平洋諸島フォーラムは1971年に発足した組織で、南太平洋14カ国に加え、2地域(仏領ポリネシア、ニューカレドニア)、2カ国(オーストラリア、ニュージーランド)が参加しているが、中国は同フォーラムへ関与を強めることで、台湾と国交を持つ6カ国への影響力拡大を狙っている。要は、中国には間接的にでも同6カ国へ接近しようとする意図が読み取れ、そのような動きは今後さらに活発になるかも知れない。

和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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