【地下鉄テロ事件】サンクトペテルブルグの悲劇―ロシアが抱えるテロのリスク

   

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サンクトペテルブルク テロ プーチン

地下鉄テロ事件の犠牲者に献花するプーチン大統領。(出典:en.kremlin.ru)

今月3日、ロシア第2の都市サンクトペテルブルクの地下鉄を狙った爆弾テロ事件が発生した。

これまでのところ14人が死亡、50人程度が負傷したとされ、地元警察はキルギス南部出身でロシアに帰化した22歳のアクバルジョン・ジャリロフ容疑者を逮捕した。

同容疑者は地下鉄内での爆発で死亡したが、今年2月に一時キルギスへ帰国し、

その際にイスラム過激派組織と何らかの接触を持ったとされ、ロシアへ返ってきたからは人が変わったような様相をしていたとみられる。

なぜサンクトペテルブルグでテロが起きたのか、これについて疑問を感じる人も多いかもしれない。

しかし昨今のロシア国内のテロ情勢を振り返ると、例えば今年2月と去年12月にはモスクワ市内でISとの関連で複数の容疑者が逮捕され、

さらに去年8月にはサンクトペテルブルグにあるイスラム過激派のアジトを地元警察が襲撃し、銃撃戦の末過激派のメンバー4人を殺害している。

この4人のうち3人は、以前南部カフカス地方のイスラム過激派組織の幹部として活動していたとされる。

ロシアが抱えるテロのリスク

イスラム過激派組織「カフカス首長国」の脅威

カフカース共和国

(出典:Twitter[@therussophile])

今回の実行犯の動機などが分かっていない段階で、事件の詳細について述べることはできない。

しかしロシアは常時イスラム過激派によるテロのリスクを抱えており、ここではその歴史について簡単に振り返ってみたい。

長年ロシアは、分離独立を掲げるチェチェン独立派、また国際テロ組織アルカイダと関連が指摘されるイスラム過激派組織「カフカス首長国」のよるテロの脅威を抱えてきた。

2002年10月のモスクワ劇場占拠事件、2004年2月と2010年3月のモスクワ地下鉄爆破テロ、2004年9月のベスラン学校占拠事件、2009年12月の特急列車ネフスキー爆破テロ、

2011年1月のドモジェドヴォ国際空港爆破テロ、2013年10月以降の南部ボルゴグラードでの一連のテロなど、

断続的にテロ事件が発生しており、過去の事例からもロシア国内ではいつテロが起こっても不思議ではない状況といえる。

IS関連で相次ぐ逮捕

また2014年6月のISの台頭以降、南部カフカス地域のイスラム過激派の一部メンバーらがISのバグダディ容疑者に忠誠を誓い、ISの支部として活動しており、

上述したように昨今モスクワなどでIS関連の逮捕が相次いでいる。ISはシリア内戦に介入し、アサド政権やイランと協調するロシアを非難しており、

2015年10月には、エジプトのシャルムエルシェイクを出発してサンクトペテルブルグへ向かっていたロシア機が機内に仕掛けられた爆弾によって墜落し、

シナイ半島を拠点とする「ISのシナイ州」が犯行声明を出している。

今後のロシアをとりまくテロ情勢

今後のロシアを取り巻くテロ情勢も多くのリスクを抱えている。昨今シリアとイラクを拠点とするIS中枢は、

米軍やイラク軍による攻勢により領域支配を失っているが、そこに生き残る外国人戦闘員の拡散が懸念される。

ロシアからもカフカス地方を中心に数千人がISに参戦するためシリア・イラクへ渡ったとみられ、ロシア当局はその戦闘員らの帰還を強く懸念している。

今後ロシアのテロ情勢はどうなるのであろうか。それを予言する事はできないが、少なくとも上記のようなことが国際テロリズムのウォッチャーとして述べることはできる。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、国際テロ分野においてアカデミアを中心に、シンクタンク、コンサルティング会社など幅広く活躍。2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。

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