史上最大の人道危機に陥るイエメン トランプ政権の意図とは

   

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イエメン 子どもたち

歴史上最大の人道危機に陥るイエメン

米国防総省のデービス報道部長は3日の記者会見で、米軍とサウジアラビア軍によるイエメンでの空爆が2月末以降で70回を超えたと明らかにした。

約2年にわたるこの作戦はテロ組織「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」を標的にしたものだ。31日からは新たに、首都サナア等を空爆。

国連はこの内戦によって人口の3分の2を超の約1900万人に支援が必要になっていると指摘。イエメンは歴史上最も深刻な事態に陥っている。

アメリカをここまで激しい攻撃にかきたてるイエメンで、何が起きているのか。安全保障やテロ対策に詳しい清和大学 和田大樹氏に聞いた。

トランプ政権が加速させるイエメンへの攻撃

trump トランプ 大統領

(出典:トランプ氏Facebook)

トランプ政権になって米国のAQAPへの攻撃が加速化しているようだ。オバマ政権下では2012年に41回、

2016年に38回であったにも関わらず、今年に入ってその数は既に30回を超えている。(編集注:3月末発表時点)

トランプ氏は外交・安全保障政策の最優先課題にイスラム国(IS)の破壊、より詳しく言えば世界各地にある

サラフィジハーディスト集団の破壊を掲げており、AQAPへの攻撃も今後より厳しさを増すことが予想される。

近年はシリア・イラクを拠点とするISに対して国際社会の注目が一極化しているが、米国はAQAPの脅威を国土安全保障上の最大の脅威と位置付けてきた。

米国が警戒する「AQAP」とは

AQAP

ではなぜ米国はAQAPを強く懸念し、今日それに対する攻撃を強化しているのか(もちろんトランプ氏の政策判断もあるが)。その問いに答えるにはAQAPの歴史を振り返る必要がある。

AQAPは、サウジアラビアから逃れたアルカイダのメンバーたちがイエメンに活動拠点を移し、当時の「イエメンのアルカイダ」(AQY)と合併して2009年1月に誕生した組織である。

しかしAQAPの誕生以前から、イエメンでは2000年10月の米艦コール爆破テロ、2002年10月の仏タンカーリンバーグ爆破テロなど欧米権益を狙った国際テロ事件が発生し、また9.11同時多発テロをはじめ、

アルカイダによるテロ事件の容疑者たちの中にはイエメン国籍を持つ者、もしくはイエメンでテロ訓練を受けた経験がある者が数多く含まれており、国際テロ情勢の中でイエメンは常に多くの懸念事項を持ってきた。

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米国におけるAQAP・イエメンが関係するテロ事件

アリゾナ州・フォートフッド陸軍基地銃乱射事件

アリゾナ州・フォートフッドでの陸軍基地銃乱射事件。

そして米国がAQAPをより強く警戒するようになった背景には、その誕生以降断続的に続いた米国へのテロ事件がある。

その殆どは未遂のうちに終わったものの、具体的な事件としては以下のようなものがある(2010年1月米国はAQAPを国際テロ組織に指定した)。

(1)イエメンで訓練を受けたナイジェリア人ウマル・ファルーク・アブドルムタラブによるクリスマス米旅客機爆破未遂テロ事件(2009年12月)

(2)AQAPの広告塔である米国出身のアンワル・アウラキから影響を受け、過激主義に目覚めた精神科医ニダル・マリク・ハサンによるアリゾナ州・フォートフッド陸軍基地銃乱射事件(2009年11月)

(3)アウラキから影響を受けたパキスタン系米国人ファイサル・シャザドによるニューヨーク・タイムズスクエア爆破未遂テロ(2010年5月)

(4)イエメン発米国行の貨物輸送機に乗せたプリンターのカートリッジに爆薬を隠した貨物機爆破未遂テロ(2010年10月)

それ以降も米国による無人爆撃機などによる攻撃で、アンワル・アウラキやサミール・カーン、また当時のリーダーであったナシル・ウハイシなどが殺害されたが、

宗派対立の激化や軍・警察の脆弱性が顕著なイエメンには、AQAPが勢力を維持できる十分な土壌がある。

またAQAPはISとは異なり、部族の伝統や文化、風習など独自の地域性を尊重し、

その地域勢力と密接な関係を構築する戦略を採ると同時に米国への攻撃意思を強く示しており、今後も米国にとっては非常に難しい対処となることだろう。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。他に岐阜女子大学特別研究員を務める。

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