激動の2017年・東南アジアのテロ情勢 (5)タイ

   

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タイ

長年にわたるイスラム過激派のテロの脅威

タイは南部3県(パッタニー県・ヤラー県・ナラーティワート県)を発祥とするイスラム過激派によるテロの脅威に長年悩まされている。

近年のIS情勢に照らして考えると、タイはフィリピンほどその情勢に大きな変化が見られるわけではないが、

去年以降その影響は少なからず表面化しており、今後の情勢次第ではISのさらなる浸透も考えられる。

タイでは去年8月、南部のリゾート地のプーケットやホアヒン、トラン、スラタニなどで爆弾テロ事件が発生し、4人が死亡、30人以上が負傷したが、

この一連の事件ではタイ南部における独立国家「パッタニ共和国」の樹立を目指す武装組織「パッタニ・マレー民族革命戦線(BRN)が犯行声明を出した。

また同年11月にタイ治安当局は、首都バンコクと近郊にある観光施設を狙ったテロ攻撃を計画していた容疑で3人の男を逮捕したが、

後にこの男たちはタイ南部のイスラム過激派組織との関係はないことが明らかとなった。

タイ南部でのISの影響力の浸透

タイ パッタニー県

マレーシアとの国境に接するタイの深南部。住民はマレー系が多く、タイからの独立を目指す動きがある。

しかし南部のイスラム過激派組織とISとの関係を否定してきたタイ治安当局は、去年11月になって一転し、ISの影響が南部に浸透していることを公式に認めた。

同月タイ治安当局はオーストラリア警察から得た情報をもとに、タイ国内で複数の人間がISへ資金援助を行い、また国内で10万を超えるFacebookユーザーがIS系サイトにアクセスしていたことを明らかにした。

それによると、タイ南部のイスラム過激派に関連するネット上のホームページやSNSのアカウントでは、ISの黒い旗が見られることも大幅に増えたとされる。

またロシア当局は2015年末、タイ治安当局に対してISに関係する10人がタイへ入国する恐れがあると警告したが、それ以上の詳細については分かっていない。

このように、タイ国内ではIS関連の具体的なテロ事件は起こっていないが、ISのブランドやイデオロギーはよる影響は同国内にも見られるようになっている。

シリアとイラクにおいてISは組織的に弱体化傾向にあるが、今後タイ当局と南部イスラム過激派を巡る情勢が悪化するようなことがあれば、それだけISに同国内へ浸透する余地を与えることになる。

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和田 大樹(わだ・だいじゅ)オオコシセキュリティコンサルタンツ シニアアナリスト兼アドバイザー/清和大学講師。国際政治学や安全保障論を専門とし、2014年5月に主任研究員を務める日本安全保障・危機管理学会から奨励賞を受賞。著書に『テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策』(2015年7月 同文舘出版)など。他に岐阜女子大学特別研究員を務める。

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