ドドン大統領就任後、ダイナミックに動くモルドバの政治

   

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政府庁舎の前にあった立て看板。市民は「こいつらは悪い奴だ」と言っていた。「DODON」という文字が見えるが、このリストにはドドン大統領は載っていない。(2015年11月筆者撮影)

政府庁舎の前にあった立て看板。市民は「こいつらは悪い奴だ」と言っていた。「DODON」という文字が見えるが、このリストにはドドン大統領は載っていない。(2015年11月筆者撮影)

トランプ大統領就任後のアメリカほどではないが、モルドバでも12月のドドン大統領就任後、大きく動いている。

ドドン大統領はいわゆる親露派に属し、ロシアとの関係を深めようとしている。一方、首相と議会は親欧派に属している。今、モルドバの政治から目が離せない。

モルドバにおける大統領の役割

国民から選ばれた大統領

親露派で知られるモルドバのドドン大統領。これまでの政権とはうって変わって、沿ドニエストル共和国に友好的な姿勢を示している。

モルドバのドドン大統領。

「大統領」と一言でいっても、国によって権限が異なる。

一般的に、旧ソ連諸国はロシアのように大統領の権限が大きいが、モルドバでは大統領の権限が小さい。なぜなら、2016年3月まで、大統領は議会によって選出されていたからだ。

そのため、大統領よりも首相や議会のほうに力があった。しかし、2016年3月に憲法裁判所が大統領選出のシステムを変更。議会を通じた間接選挙から国民が直接選ぶ直接選挙に変わった。

そして、2016年12月に大統領選挙が行われ、野党の社会民主党党首、イーゴリー・ドドンが「行動と連帯」のマイア・サンドゥに勝利した。

ドドン大統領は久しぶりに国民によって選出された大統領なのだ。そのため、今までの大統領と異なり、国民の支持を受け、精力的に活躍することが予想される。

単純に親欧、親露と色分けできないモルドバ

凱旋門前にあるテント モルドバ

凱旋門前にあるテント(筆者撮影)

それでは、なぜ親露派のドドンが大統領選挙に勝利したのだろうか。

一般的に、旧ソ連諸国の政治は「親欧」「親露」で色分けされる傾向があるが、実態はそれほど単純ではない。2選挙戦で大きな影響を与えたのが、2015年に起きた10億ドル喪失事件だ。

10億ドルは国内総生産の8分の1に当たるのだが、それだけの大金が中央銀行から忽然と姿を消したのだ。

国民は当時のモルドバ当局や政治家に怒りの矛先を向けた。もともと、モルドバは汚職が蔓延しており、日頃の怒りに油を注いだような形だ。

私は2015年11月にモルドバを訪れたが、政府庁舎の前には活動家が建てたテントが並んでいた。

もちろん、EUへの幻滅、ロシアとの関係改善への期待も選挙戦に大きな影響を与えただろう。しかし、それと並んで「親欧」「親露」とは直接関係のない、国民が持つ日々の怒りを忘れてはいけない。

ロシアとの関係改善に走る大統領、弾劾の機会を伺う議会

ドドン 大統領 モルドバ ロシア プーチン

1月17日のドドン大統領とプーチン大統領との共同記者会見の様子。ロシア・モルドバは関係強化で一致した。(photo by kremlin.ru)

大統領就任後、ドドンはロシアとの関係改善に向かって走っている。1月17日、ドドン大統領は初の外遊先としてモスクワを訪問。ロシアのプーチン大統領との首脳会談にのぞんだ。

ドドン大統領とプーチン大統領は両国の関係強化で一致。ロシアへの接近を強烈に印象づけた。

ドドン大統領はロシア主導の関税同盟への加盟も示唆している。一方、EUに対しては昨年、EUとの間で結ばれた連合協定の破棄を訴えている。

ドドン大統領はEUに対して「連合協定はモルドバに何ももたらしていない。」と強く批判している。

一方、親欧派の議会はドドン大統領への反発を強めている。議会多数派の自由党、ギンプ党首は17日の会見でこのように述べた。

「(モルドバ領内にある未承認国家)沿ドニエストル共和国の指導者を称賛した時点で、ドドン大統領は憲法に違反している。自由党は大統領の弾劾に向けての手続きを開始した」

今後、ミクロで見れば、議会と大統領との対立、マクロで見ればモルドバをめぐって、EUとロシアとの対立が激化する可能性がある。

2017年、モルドバがどのような動きを見せるか。今後によっては、小国モルドバがEUとロシアとの関係に大きな影響を与えることが予想される。

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1987年生まれ。神戸市出身。神戸大学大学院国際文化学研究科修了(国際関係・比較政治論コース)。専門はユーゴスラビアといった中東欧の政治・国際関係。
民間企業に勤務後、3ヶ月間の中東欧でのバックパッカー体験を経て、2016年より独立。『Compathy Magazine』『TRIP’S』など複数のメディアで活躍中。

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